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「相撲は上手(うわて)が有利ですが、闘牛は下手(したて)です。首を相手の下に入れた方が押せるからです。チョッパーはこれがまったくできないのです。うまい牛は上手になっても首を使って下手を取り直しますが、それもできない。前足を伸ばして、押されないようにする体勢も取れない」
「思わず息を飲む取り組みでした」
だが、闘牛は大好きで、一度も逃げたことがない。
「いつも圧倒的に不利な状態で引き分けにしてもらうのですが、根性があって、やられても嫌にならないようなのです」と柿木さんは話す。
6月場所も開始早々、いきなりやられた。半ばのけぞりながら闘牛場の縁にまで押し込まれ、しかしその後は粘りに粘って、一進一退を繰り返した。観客席から何度も歓声が沸き、女性司会者が「思わず息を飲む取り組みでした」と会場アナウンスするほどだった。
「不器用で愚直なところが、かわいくて仕方ありません。日頃は大人しくて、柔和な牛なのです」。柿木さんは目を細める。
闘牛場で見せる命の輝き
久慈市山形町の日本短角
素質を見抜かれて闘牛になり、人々に雄姿を見せ
「人間は動物の命をもらって生きています。畜産で暮らしを立てている山形町だからこそ、生きて価値を発揮する闘牛を行う意味がある」と柿木さんは力を込める。チョッパーや白樺王が闘牛場で見せる命の輝きがまぶしいのは、そのせいかもしれない。
写真=葉上太郎