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6割が女性客! 岩手県久慈市の“日本最強の闘牛”に黄色い声援が集まる理由とは?

「平庭嵐が前に出た。豆之介も出ろ。出ろっ」

2019/08/17

 ドスン。頭と頭がぶつかる音が響く。

 岩手県久慈市の山形町で開かれる「平庭(ひらにわ)闘牛」。横綱・豆之介(10歳)と大関・3代目平庭嵐(11歳)の対戦が始まった。

闘牛は目をむいて、力を振り絞る

「がっぷり四つに組んで、両者一歩も引きません」

 牛を操る勢子(せこ)の一人で、市職員でもある新井谷(にいや)保彦さん(49)が、場内を走り回りながらマイクで実況解説する。

「平庭嵐は鹿児島県・徳之島の闘牛でも活躍した百戦錬磨の牛です。どんなに大きな牛も負かしてきました。しかし、体重は750キロしかなく、1トンもある豆之介とは200キロ以上違います。しかも、今回は左足を負傷していて、なかなか動けません。対する豆之介は横綱だけにスキがありません。よっしゃー。はい、よっしゃー」

 新井谷さんの解説は、勢子特有の掛け声入りだ。

大観衆を前に場内で実況解説をする新井谷保彦さん

「がっぷり四つに組んで、両者一歩も引きません。豆之介の攻撃を、体重の軽い平庭嵐が受ける。さぁ、豆之介の力が入ってきた。目のふちが赤くなっています。あっ、平庭嵐が前に出た。豆之介も出ろ。出ろっ。反撃だ。よいっしゃー、よいっしゃー」

 巨体と巨体がぶつかり合う大相撲になった。新井谷さんの実況も熱が入ってきて、解説なのか、声援なのか分からなくなる。

 闘いは引き分けで終わった。割れんばかりの拍手に包まれて、2頭は意気揚々と引き揚げた。

年に3場所ある東北唯一の闘牛大会

 平庭闘牛は、東北唯一の闘牛大会で、正式には年に3場所ある。8月18日には今年2回目の場所が開催され、22頭が出場する。

 紹介した豆之介と平庭嵐の対戦は、今年の1回目、6月場所の様子である。

開会前には闘牛場内で安全を祈る

 全国9市町で催されている闘牛でも、久慈市山形町のそれは極めて特殊だ。どちらかが負けるまで、場合によっては血みどろになっても闘わせる地区もあるが、平庭闘牛は勝敗が見えた段階で、勢子が引き分けに持ち込んで終わらせる。

 このため手綱を放さない。勢子と牛、そして勢子同士が呼吸を合わせながら闘いを進める。