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日付が変わったら「青春18きっぷ」を見せる

 1982年に「青春18のびのびきっぷ」が発売されると「345M」は大人気となった。青春18きっぷは1回が1日有効。0時から終電まで乗れる。「345M」は東京発23時25分、戸塚発0時5分だったから、戸塚まで当時490円の近距離きっぷを買って、日付が変わったら車掌さんに青春18きっぷを見せて日付を入れてもらう。これで青春18きっぷをフルタイム使える。

 このテクニックはいまも続いているけれど、現在の「ムーンライトながら」は東京駅発車時刻が23時10分に繰り上がり、日付変更駅が小田原になった。東京~小田原間の普通運賃は1490円だ。しかも520円の指定席料金が必要だ。ちょっとおトク感は薄れたかな。横浜駅発車直後に検札が始まるけれど、車掌さんは心得ていて、あらかじめ翌日に設定した検印を青春18きっぷに押してくれる。

 無名列車の頃はすべて自由席で、固い真四角のボックスシート。大人になったらグリーン車に乗るんだという夢はとうとう叶わなかった。1996年、全車指定席の「ムーンライトながら」にリニューアルされたからだ。

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大垣夜行より格段に乗り心地は良くなった

 大垣夜行の人気により、近距離区間で帰宅客と長距離客が混在した。その不都合を解消するために指定席制度を導入した。座席指定料金を取る代わりに車両が新しくなった。旧国鉄の急行形165系から、JR東海の特急電車373系へ。グリーン車はなくなったけれども、普通車もリクライニングシートで快適になった。ただし乗降口と客室の間に仕切り扉がなくて、車両の端の席はちょっと残念。うるさいし、乗降扉から夏の熱気、冬の寒気が入ってくる。

全盛期には臨時の「ムーンライトながら」も

 全車指定席となったおかげで定員が減り、乗れない人が出てきた。そこで増発用臨時列車が投入された。当初は165系電車で普通車自由席のみ。のちに全車指定席の「ムーンライトながら91号(上りは92号)」となった。車両は旧国鉄特急形の183系で、品川~大垣間。品川駅を定期の「ムーンライトながら」よりあとに発車するけれども、豊橋駅で定期列車を追い越して、大垣には早く着く。サービスがいいというより、定期列車の方は早く着きすぎないように時間調整をしていた。臨時便はお構いなしに突っ走る。むしろ寝る時間が少なくて困った。

品川始発だった臨時快速「ムーンライトながら91号」(183系電車)

 ここまでが「ムーンライトながら」の全盛期。このあと、高速夜行バスや低価格ビジネスホテルの誕生などが影響して、夜間の鉄道利用客そのものが減っていく。「ムーンライトながら」は定期列車から臨時列車となり、夏休みや年末年始のみの運転となった。車両は「ムーンライトながら91号(92号)」で使われた旧国鉄183系となって、ひと世代古くなった。現在は後継車種の185系電車になった。