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担当車両の185系電車の廃車が近づいている

 国内外の若者たちから大人気の「ムーンライトながら」だけど、私はいつまで走ってくれるか心配している。多くの鉄道ファンも同じ気持ちだろう。かつては定期列車として毎日運行していた「ムーンライトながら」は、2009年からは多客期の臨時列車となった。そして年々、運行日数が減っている。

定期列車時代の「ムーンライトながら」はJR東海の373系電車

 それに加えて、担当車両の185系電車の廃車が近づいている。JR東日本は老朽化しつつある185系電車を順次廃車とする方針だ。すでに高崎線方面の特急列車から引退済み。伊豆方面も引退予定で、特急踊り子号には中央本線の新車導入で余剰となったE257系が転属してくる。順当に考えると、185系の後継車両のE257系が「ムーンライトながら」の新担当車両になる。ところが、いまのところE257系が熱海から先のJR東海区間に乗り入れた実績はない。

 185系が「ムーンライトながら」に起用された理由のひとつに、JR東海区間の走行実績がある。特急「踊り子」の修善寺行きは熱海~三島間でJR東海区間を走り、三島からは伊豆箱根鉄道に乗り入れている。これは国鉄時代からの伝統だ。この修善寺行き「踊り子」の存続も185系引退で危ぶまれた。

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特急「踊り子」でも使用されている185系車両。間もなく引退するとみられている ©iStock.com

若者の旅行文化を盛り上げるためにも……

 しかし、鉄道趣味誌「j train」の2019秋号によると、修善寺行きの踊り子もE257系で存続されるようだ。房総特急として使われ、現在は余剰となっている編成を配置転換する。そうなると「ムーンライトながら」もE257系を使える。

 ただし、車両が使えるからと行って「ムーンライトながら」も安泰とは言い切れない。ひとつの不安が解消されただけで、採算、あるいは夜間のダイヤにおける貨物列車との調整等の理由で運行期間のさらなる短縮、そして運行終了も考えられる。

「ムーンライトながら」が全席自由席の「大垣夜行」と呼ばれていた頃から、この列車は若者たちの移動を支えてきた。初めての長距離列車旅。その中の何割かの人々が、ここで鉄道の旅に親しみ、旅行好きになっていく。だから、若者の鉄道旅行文化を支えるためにも、JRグループにとって未来のお得意様を確保するためにも、「ムーンライトながら」は存続させてほしい。この列車は鉄道旅行の入り口だ。どうか閉ざさないでほしい。

写真=杉山淳一