1ページ目から読む
4/4ページ目

――作品を撮るうえで特に意識していたことはありますか?

村西 「我々でしか真実は描ききれない」という矜持を持っているんです。あのね、事実を事実のように撮っても真実は描けないんですよ。

――村西監督にとっての“真実”とは?

ADVERTISEMENT

村西 例えばね、近親相姦している男女が「撮ってくれませんか」と事務所にやってくることがたまにあるんです。じゃあ実際にやってみせて、というと、ドキドキもしないし眠たくなるようなセックスを当たり前のようにやってみせるんです。なぜつまらないかというと、その営みは彼らの日常でしかないから。予定調和なもので、他人を興奮させることはできないんですよ。

©文藝春秋

 禁断の世界というのは、畳に爪を立てて引っ掻いて、「やめて……!」とか「許して……!」とかがあって然るべきなんです。そういう脚色があるからこそ、初めて観る人も興奮するわけです。フィクションでしか描けない真実もある。そこに我々の存在意義があるんです。

――最近はフィクションの世界にも様々な制約がありますよね。コンプライアンスの問題や、ネットでの炎上などがたびたび話題に上がります。

村西 でもね、作り手こそ異端でなければならない。そうでないとみんなの心を鷲掴みにはできないでしょ。「天気の子」みたいな爽やかな青春映画も素晴らしいんだけど、人間の実像にはドロドロ、ギラギラしているものがある。その中でのた打ち回って、真実とか生きる意味を追求している人は山ほどいるわけですよ。現実はハードで、強烈なんですよ。エンターテインメント作りはお客様商売です。お客様にご満足いただくためには、命がけでやらなくちゃいけない。

50億の借金を抱え、倒産してもなお撮影を続ける(村西とおる事務所提供)

――次回作を撮るとしたらどんな作品を撮りたいですか?

村西 私は相手がいないとインスピレーションが湧かないの。だから私の夢は、黒木さんのような衝撃的な方とまた出会うこと。人間の性愛は無限ですから、出会いさえあればAVの演出も無限にあるんです。

 いま、世界で日本のAVは結構人気ですよね。ドラマ「全裸監督」が人気なのもその証左でしょう。でも今の日本には、かつての私みたいにチャレンジするような人が足りません。そんな時代にはでっかい浣腸をギュッと一発してあげたいですよ(笑)。