文春オンライン

中川翔子が語るいじめ体験「毎日戦う、生き伸びる、やり過ごすのに一杯一杯だった」

SOSを出してくれた場合、大人は何よりも被害者に寄り添ってほしい

2019/08/31
note

――超党派の議員の勉強会で「いじめ防止対策推進法」の改正案が作られました。いじめ防止を最優先にすること、いじめ対策主任を置くこと、いじめを放置や助長した教員に対する懲戒処分を盛り込みました。しかし、「現場が混乱する」などの意見があり、改正がされませんでした。

中川 それが仕事だ、混乱しろ! はあ、なんで大人は頭がかたくなっちゃうんだろうな。時代にあわせて、子どもたちを守るのが大人の仕事なのに。寄り添った形にぜひ変えてほしいですね。

 大きな事件があって、例えば大津市のいじめ自殺事件で失われた命があって、ちょっとずつ動いているわけじゃないですか。命が失われることを未然に防ぐことができるはず。個性を認めてくれる環境があれば、大人がいたらいいですね。

ADVERTISEMENT

――いじめは、被害者だけでなく、周囲にも衝撃を与えることがあります。私の取材では、いじめられていない子ですが、止められないことで自殺をした、ということがありました。

中川 え! 罪悪感で? 感受性が強いのかな。優しすぎるのかな……。どんな場合でも、自分で命を絶つことって、これまでやってきたことがぜんぶ無駄になる。止められなかったと思っても、少しずつ日数が進んで、中学から高校になるだけでも、ぜんぜん精神の容量が変わるじゃないですか。でも、そのときは見えないんですよね。

 

「いじめから逃げる」って言い方はおかしい

――いじめに先生が関与することがあります。1986年の中野富士見中で起きたいじめ自殺では「葬式ごっこ」に先生も参加していました。また、スクールカーストを先生が作ったケースもあります。

中川 通信制高校は風通しがよくって、スクーリングとレポートはやらなければならなかったけど、授業自体は好きな曜日に行ったり、行かなかったりでも大丈夫だったんです。ひきこもり、不登校、いじめられっ子、ギャル、芸能人、いろんな人がいて。席を自由に選べたんですよね。

 それだけでもぜんぜん違って。だから教室の隅っこで一人で絵を描いていたんです。そしたら、ギャルの人が「めっちゃ、絵が上手いじゃん」「カラオケ行こうぜ」って話しかけてくれて。前の中学だったら、スクールカーストでいえば「陽キャラ」で「1軍」のような人だったんです。

 よく「いじめから逃げる」って言いますけど、「一回しかない人生で正しい選択をした」と言い方を変えて、角度を変えればいいんですよね。本のために対談した子も、「逃げではない。正しい選択をしただけ」だって。本当にその通りだと思います。