文春オンラインでは、「あなたが書きたい『平成の名言』と『平成の事件』は?」と題して、広く原稿を募集しました。今回は、その中から佳作に入選した作品を掲載します。

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「逃げ場所に図書館を思い出してね。」

 平成27年8月26日。鎌倉市図書館の公式ツイッターが投稿した名言が忘れられない。

「もうすぐ二学期。学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい。マンガもライトノベルもあるよ。一日いても誰も何も言わないよ。9月から学校へ行くくらいなら死んじゃおうと思ったら、逃げ場所に図書館も思い出してね。」(原文ママ)

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 この投稿の8日前、内閣府が平成27年度版「自殺対策白書」にて、夏休み明けの9月1日、子どもの自殺が急増するというデータを発表した。それまで年別に調査していたものを日別に統計したことで明らかとなった。

「学校が子どもたちの一つの社会である」が子どもたちを苦しめる

 日本全体における自殺者数はピーク時の平成15年から年々減少傾向にあるものの、小中高生の自殺者数は例年300人前後と横ばいだ。平成18年に自殺対策基本法が制定されてから、文部科学省は「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」を定期的に開催し、子どもの自殺に危機感を抱いている。ではなぜ子どもたちは、死を選んでしまうのか。

 まず小中学生の自殺の原因として最も多いのは「学業不振」である。次いで「家族の𠮟責」「親子関係不和」「友人との不和」などと続いていくため、必ずしも学校だけが要因ではなく、家庭にもその一因があるといえる(警察庁『平成22年度中における自殺の概要資料』より)。

 しかし、高校生では「進路の悩み」が最も多く、「学業不振」「うつ病」と続き、「親子関係の不和」と「友人との不和」がほぼ同等の件数で多くなっている(前同)。年齢が上がり、学校生活を長く送っていくにつれて「学校が子どもたちの一つの社会である」という観念は大きくなり、いつしか拘束力、支配力となって子どもたちを苦しめる。

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