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特集観る将棋、読む将棋

2019/09/02

 永瀬叡王に勝つには、負ける気がしないという相手の気持ちの裏をとるのが一番と考えていた。前年の再現を狙ったのだ。

 しかし今度は勝手が違った。序盤から油断なく指され、なかなかリードを奪えなかった。それでも筆者がわずかにリードして終盤戦に入ったのだが、一つのミスを咎められて負けた。

バナナを食べる後ろ姿にも気迫が……

 この対局はニコニコ生放送で中継され、永瀬叡王がトレードマークともいえるバナナを食べる姿に盛り上がったという。永瀬叡王が背中を向けてバナナを食べていることに筆者も気づき、その後ろ姿に1年前よりも気迫を感じた。どんな形であれ勝ちをもぎとる、逆転されたのはその気迫に押されてのものだった。

 最近の若い棋士たちは、賢く、スマートで、もちろん将棋も強い。

 しかし永瀬叡王ほどの気迫を感じることはない。これがトップ棋士も恐れる気迫なのか、そう感じたものだった。「将棋に才能は必要ない。努力だけだ」と言い切るだけの精進を続けて生まれた自信は、気迫となって相手に圧力をかける。そして時流に乗ると威力を増す。

 それが昨年からの爆発的な勝ちっぷりにつながっているのだろう。初タイトルを獲得し、いまや豊島将之名人・渡辺明三冠という2強に迫る勢いだ。

©文藝春秋

王座戦は「真理か、勝負か」の対決になる

 今日、王座戦五番勝負の開幕を迎える。二冠を目指す永瀬叡王の相手は斎藤王座だ。電王戦FINAL出場メンバー同士による初めてのタイトル戦となる。

 筆者の見る限り、二人には将棋AIの取り入れ方に違いを感じる。斎藤王座は、将棋の定跡を進化させることに意義を感じ、研究を深めるために将棋AIを生かしているようにみえる。一方、永瀬叡王は、将棋を人間と人間との交わりととらえ、その中で勝ちをつかむために将棋AIを生かしているようにみえる。

「真理か勝負か」、その対決になると予想する。

 電王戦FINALでは初戦で斎藤王座が勝ち、2戦目に永瀬叡王が勝った。あれから4年の時を経てタイトル戦でこの両雄が激突する。

 あの時の興奮を覚えている人ほど、今回の王座戦はワクワクするはずだ。これが将棋界の紡ぐ物語であり、「観る将」の真の楽しみ方だと思う。

 筆者も電王戦FINALには心震わされた1人だ。この戦いを心から楽しみたい。

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