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子育てって、忍耐だと思うんですよ

 長男が北海道の海でプランクトンを採取して観察したいという。それが楽しいと思うなら連れていくし、頑張って顕微鏡で見ればいい。でもそれが楽しいのはお前だけであって、私ではないのだ。楽しく刺激的な一日を送って良かったねと親としては思うけど、一人の男性としては息子がプランクトン採取用のペットボトルもって古い歯ブラシで海辺の石に張り付いたコケや海藻を剥がして嬉しそうに蒐集しているのを待っているあいだは、とてつもなく暇な時間がゆーーっくり流れるわけであります。

海を望む山本家の三兄弟たち ©山本一郎

 それでも、夫婦で話し合ったり、子どものはしゃぐ姿を動画で撮ったり。夏休みは、ゆったりと過ごすのがいいと思います。

 家族ってそういうもんよな。まあ、自分の子どものころを思い返すと、いろいろしてもらって、それが当たり前だと思ってた。でも親になって思うのは、自分が楽しいことよりも、子どもが喜んでいるのを見て満足できるかに尽きると感じます。そういう子育てって、忍耐だと思うんですよ。親である自分はちっとも楽しくないけど、家族が幸せにひとつの時間を共有できるからこそ、幸せを実感することができる。

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 そこで「俺はつまらんからゲームセンターにでもいくぞ。お前らは好きに遊べ」となれば、家族の幸福は中断されてしまうかもしれない。家族という大きな器の中に、頑張って苦労してせっせと幸せを詰め込む作業。そんな感じ。親として、人として、決して楽しくはないが、幸せはとても実感できる。家族との時間って、それでいいんじゃないかと思うのです。

©山本一郎

「ママが楽しいならそれもそうか」と思いつつ

 そうやって、家族としてのまとまりを維持し、つまらない思いもグッと呑み込んで家族旅行を幸せに終えるために頑張っておるところで、「かあちゃんがもっと楽しく過ごせたら、夏休みはもっと楽しい」などと言われると、とうちゃんは半分「ママが楽しいならそれもそうか」と思いつつ、残りの半分は「ワイは???」と思うんですよ。もちろん、こういうことを言い出すとキリがないのですが、葛藤を掻き立ててくれるだけ、オイシックスの広告はいいコピーなんだな、と。

 そういう葛藤を抱きながらも家族で大事な時間を幸せに包まれながら過ごす、というのは大事なことかもしれない。そういう幸せは、いつか失われてしまうものだから。後になって「あのときは実に幸福だった」と思い返しているときにもまた、新たな幸せの形を見つけていられれば良いのですが。

 皆さまが良い夏休みを送られたのであれば何よりです。

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