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「昭和な中華料理店」が消えている…… 南阿佐ケ谷の“小さなラーメン屋”を守る70代夫婦の思い

B中華を探す旅――南阿佐ケ谷「和佐家」

2019/09/13

genre : ライフ, グルメ

note

いよいよラーメンを注文!

「ラーメン」を頼んでみた。トッピングは、ねぎ、もやし、メンマ、チャーシュー、ナルト。いかにも「基本」という感じだ。スッキリとした醤油スープが、小麦の香りがする縮れた中太麺によく合う。奇をてらっていないからこそ、見た目にも味にも安心感がある。

ラーメンは醤油スープが中太麺によく合う

 これは、正しいラーメンだ。

 ところで調理しているところを眺めていたとき、あることに気づいた。英世さんは、一品つくり終えるたびに、厨房をきれいに拭いているのだ。そういう店は、文句なしに信頼できる。

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一品つくり終えるたびに厨房を拭く

「そう、きれい好きなんですよね。道具も、昔から使っているものをきちんと手入れしているし」と、和子さんも英世さんの几帳面さを認める。

仕事には手を抜かず、趣味にも没頭する

「それにね、こういうのも自分でつくっちゃう。けっこう器用だからね。鉄道模型も好きだしね」

 店内に飾ってある木彫りの看板を和子さんが指差すと、英世さんが話を続ける。

英世さん特製の看板

「あと、オーディオ。オーディオ好きなんです。管球アンプはみんな自分でつくってるの。近所にあった材木屋さんで、25ミリの合板を寸法を測って切ってもらって、スピーカーをつくったりね。音楽は、クラシックからラテンまでなんでも好きだった」

「自作のスピーカーって、いい音がするといいますよね」

「まあまあだな」

「中央アルプス 宝剣岳(2931m)山頂にて」と書かれた英世さんの写真

 仕事には手を抜かず、趣味にも没頭する。そんな実直な性格が、この店を支えてきたのかもしれない。とはいえ年齢的に、いつまでも続けるわけにはいかないと感じてはいらっしゃるようだ。