10月1日、京都の名所、嵐山に日本画を集めた私立美術館「福田美術館」がオープンする。オーナーは消費者金融大手、アイフルの福田吉孝社長で、福田氏の長女である川畑光佐さんが館長を務める。
「父からは『お客様のことを第一に考えなさい』と何度も言われました。そこで美術に詳しくない方にも愉しんでいただけるよう、きれいなもの、大きいもの、わかりやすいものを集めました。キャッチコピー的なフレーズを盛り込むなど解説も工夫しています」
この美術館のために15年をかけて収集された作品は約1500点にのぼるという。京都ゆかりの京都画壇の作品を中心に、俵屋宗達、尾形光琳、円山応挙、与謝蕪村、上村松園など、江戸時代から近代に至る名作がずらり。大ブームの伊藤若冲はもちろん、竹久夢二の美人画も含まれる。
美術館の構想は「京都に恩返しをしたい」という福田氏の熱意から生まれた。京都で生まれ育ち、この地で創業しただけに、京都への思い入れは強いという。
「地元の皆様のおかげで事業を続けてこられたという感謝の気持ちがあるんです。株式上場で得た利益をどのように社会に還元すべきか、両親が考えていたとき、たまたま嵐山の土地のお話を頂戴した。それが2003年頃。同時期に絵画を120点ほど買わないかというお話が来て……。偶然が重なり『これは嵐山で美術館を開きなさいということだな』と感じたようです」
その120点のなかに重要文化財(渡辺崋山「于公高門図(うこうこうもんず)」)が含まれていたことも背中を押したそうだ。
「そうは言っても、美術館の運営にはお金がかかる。維持するのはたいへんだと多くの方から聞いていたので、両親は相当な覚悟をしたのです」
川畑さんが館長就任を打診されたのは7年前のこと。
「結婚後は子育てに専念していましたが、何らかの形で両親の仕事を手伝いたいという思いはありました。なので『役割をいただけるなら、がんばります』と。美術の専門家ではないので学芸員の資格を取ることから始めました」
開館記念の「福美コレクション展」では、初公開となる狩野探幽の「雲龍図」や、およそ80年間も行方不明になっていた木島櫻谷(このしまおうこく)の「駅路之春(うまやじのはる)」などが注目される。
「個人的には竹内栖鳳の『猛虎』や葛飾北斎の『大天狗』もお薦めです。躍動感のある構図の『大天狗』は、背景に蜘蛛の巣もあり、スパイダーマンのようなんです。父のお気に入りは速水御舟の『山頭翠明』。かなりの大作で、山がドーンと描かれている。写真撮影は基本的にOKなのでSNSにどんどん載せてもらえたら。スマホとイヤホンがあれば、音声ガイドも無料でご利用いただけます。お客様に愛されて100年続く美術館を目指したいですね」
かわばたみさ/立命館大学法学部卒業。証券会社での勤務を経て、いけばな嵯峨御流の正教授となり、大覚寺でも勤務。福田美術館の構想が本格化した2012年、オーナーである父・福田吉孝氏(アイフル社長)の依頼で館長に就任。学芸員資格を取得し、開館の準備に携わる。
INFORMATION
『福田美術館』
開館記念「福美コレクション展」
Ⅰ期10月1日~11月18日、Ⅱ期11月20日~2020年1月13日。約80点を展示
https://fukuda-art-museum.jp/