牛のうんこは草原の草を巻き込んで乾いているので、鍬でガリガリと力を入れないと剥がれない。なかなかの力仕事だ。剥がしたうんこを籠に放り込むと、うんこが籠に当たった衝撃でパウダー状になり、籠の隙間からパウダーうんこが漏れて周辺に舞い散る。
日本人青年「勢いよく入れるのやめてよ! うんこ飛んでるよね? 俺の服にめっちゃ付いてるよね?」
ゲラッゲラ笑いながら更に勢いをつけてうんこを放り込む非道な我々と、叫ぶ日本人青年。彼もやられっぱなしではなく、仕返しにと籠を振ってうんこパウダーをまき散らし、皆が「やめてくれー!」と笑いながら逃げ回る。うんこで国籍も年代も違うツアー客が爆笑できるなんて、フフホト凄いな。牛のうんこが籠いっぱいになったところでパオまで戻り、その横にある焚火台にうんこを詰める。あとは夜のお楽しみ。
牛のうんこの焚火を囲みながら、月を眺める
羊肉の夕飯を食べ終わった直後、シンガポール人の女の子2名が手のひらサイズの丸い缶を持ってきた。
「みんなで月餅を食べよう!」
一昨日は中秋節(中秋の名月)。わざわざシンガポールから月餅を持ってきたそうだ。嬉しいサプライズだなぁ。6等分にしてツアー参加者とガイドに配ってくれた。
日本でお月見といえば月見団子だが、中国では『月餅』という月に見立てた中国菓子を食べる風習がある。最近は種類も豊富で、トラディショナルな小豆餡やなつめ餡だけではなく、アールグレイ餡、ローズ餡、マンゴー餡など若い世代が好みそうな月餅が開発され、各店舗が月餅商戦でしのぎを削っている。
ガイドが「じゃあ、そろそろ焚火に火をつけようか?」と尋ねた。焚火を囲みながら月餅を食べるなんて、粋な計らいじゃないか。食堂用のパオから出て、ガイドがうんこに着火すると、勢いよく炎が上がった。
牛のうんこが焚火に使えるほどの燃焼力なのか半信半疑だったが、要は枯草の塊だから想像以上にボーボーと良く燃え、火持ちも良い。たまに見える青い炎はメタンガスだろうか。9月のシラムレン草原の夜風は冷たく、焚火のおかげで体が温まる。