打つ瞬間に「ブロックされるかも」
安藤周人(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)は2018-19シーズンのB1で3ポイント(3P)シュートをもっとも決めた選手。成功確率も40.7%(405本中165本成功)と高かった。そんな名手が今回のW杯はトルコ戦、アメリカ戦、ニュージーランド戦と8本連続で3Pシュートを外し続けた。
9本目の3Pシュートに成功した経験を元に、安藤はこう振り返る。
「4試合目(ニュージーランド戦)のハーフタイムに佐古(賢一)コーチから『打ち急いでいるんじゃないか?』とアドバイスをもらった。自分の中でも無意識に『早く打たないと』と思ってしまって、リズムを崩していた。どれだけ相手が大きくても。自分のリズムを崩さないのが大事になってくる」
田中は194センチ・93キロ、安藤は192センチ・89キロと、筋骨隆々の逞しいアスリートだ。しかも彼らの主戦場はポイントガード、シューティングガードといったアウトサイドのポジション。Bリーグでは自分より大きい選手とマッチアップする場面がほぼない。
世界大会になれば2メートル級が当たり前に3Pシュートを打ち、こちらが打とうとすればプレッシャーをかけてくる。そういう状況が選手たちの認知、感覚に微妙な狂いをもたらしていた。
安藤はこうも語っていた。
「2メートルを超える選手が来ると、打つ瞬間に『ブロックされるかも』とどこかで思ってしまう。その部分で少しズレが出ていた」
篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)はこう力説していた。
「日本が世界と戦うときに必ず出てくるキーワードが『フィジカル』です。フィジカルとは何なのか、僕はこのW杯で結構考えました。体重を増やせばいいのか、体脂肪率をもっと減らせればいいのか、ウエイトトレーニングで重い重量を上げられるようになればいいのかーー。色々あると思うんですけれど、僕が感じたのは身体をぶつける、自分から当てに行くことの慣れ、技術です。それが僕らには無いと思いました」