「ストイック暗記王」は『ゴッドタン』の初期から10年以上にわたって続く人気企画だ。挑戦者が「森山直太朗の人気楽曲10曲のタイトル」のような決められたテーマを時間内に暗記すれば賞金がもらえるというもの。だが、暗記している最中に、劇団ひとり率いる「気をそらせ隊」が様々な仕掛けで邪魔をしてくるのが企画の肝だ。当初はセクシーな女性が惑わしてきたり、挑戦者の恥ずかしい過去を暴露したりするようなものだったが、どんどんとスケールアップ。壮大なストーリーの芝居で挑戦者を釘付けにし、終盤、それに参加せざるを得ない展開に持っていくようになった。
今回の挑戦者のひとりはEXITの兼近大樹。暗記部屋に入った彼の前にバーカウンターのセットがある。マスターに扮するのは劇団ひとり。そこにりんたろー。が客としてやってくる。相方も気をそらせる仕掛け人として参加しているのだ。女性たちに囲まれチャラついているが彼女たちが帰った後、カウンターに座りため息をつく。
「チャラく見えて本当は真面目」というキャラでブレイクしたEXIT。兼近は「純粋でバカで真っ直ぐ」な本当にいいヤツだが、自分は真面目でもいいヤツでもなく、ただのチャラ男。「だからあいつと一緒にいると、あいつを裏切っているようで世間に嘘ついているようで心が苦しい」と。だがマスターは「あなたは“いいヤツ”ですよ……。バカがつくほどね」と不敵に笑う。ハニートラップで陥れるため、睡眠薬を入れた酒を飲ませたのだ。
「兼近くんも可哀想に。これが出たら暗黒時代に逆戻りでしょうね」と女と寝ている写真を見せながら脅迫する劇団ひとり。するとりんたろー。は「引退」を口にする。「俺たちは過去に色々あったコンビだから、あいつにだけは迷惑をかけたくない」と。
この収録は、あの文春報道の前。「過去に色々あった」は元相方の不祥事などを指しているのだろう。しかし、あまりにも彼らの現状とリンクしていた。
「あいつは太陽だから」と泣くりんたろー。の姿を見入っていた兼近は遂に「許すに決まってんじゃん!」と芝居に入っていく。「俺が太陽なら、お前は月じゃん。俺がいなきゃお前輝けねぇだろ!」と。バカバカしく笑えると同時に2人のいい関係性に泣ける。そこに流れているBGMは菅田将暉の「まちがいさがし」。その歌詞はまるでEXITのために書かれたかのようにハマっていた。
かつて同企画に出演した東野幸治はその手間のかけぶりを「もっと簡単に笑わせることできるんちゃう?」と彼流の言い回しで称賛した。ストイックに作り込むからこそ、すべてが完璧にハマる奇跡のようなものができあがったのだ。
INFORMATION
『ゴッドタン』
テレビ東京系 土 25:45~
https://www.tv-tokyo.co.jp/god/