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樹木希林さんはこの映画を観たら何て言うだろう――是枝裕和監督『真実』インタビュー

2019/10/15
note

立ち止まって考えるアイデアを出してもらう役割

――監督助手を取り入れた、もう1つの目的というのは?

是枝 助監督は現場を先へ進めていくアクセルだけど、監督助手はブレーキ。立ち止まって考えるアイデアを出してもらう役割です。もちろん助監督もたくさんアイデアを出してくれるんだけど、職域として現場を先へ進めていく人たちだから、現場が止まってしまうようなアイデアは絶対に言わない。つまり「昨日のあのシーンはもしかしたらNGなんじゃないか」とは言わないんです。撮り直しになっちゃうから。

 でも監督にとってそういうアイデアは必要だから、立ち止まれなくなるとやっぱりよくないんですよ。もし僕自身が、「昨日撮ったものがよくないんじゃないか」と考えていたとしても、言いにくい状況だってある。だからこそ、監督に対していつ、どんな意見でも言っていいというポジションを作ったんです。それが10年前ですね。

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――育てるという意味もあるけど、その存在によって監督自身も立ち止まるきっかけになっているんですね。

是枝 そう、両方です。西川は助監督だったから純粋には監督助手じゃないんだけど、1代目に西川がいて、2代目には砂田、3代目が広瀬奈々子さん。その後にもう1期いて、今は第5世代が監督助手をやっています。今回フランスで参加した2人(浅野マチューさんと庭野月伯さん)は6代目になります。

 

 現場は止まるかもしれないけど、そういう子たちがいてくれたほうが立ち止まって考えやすいなと。フランスにいても日本にいる時のような感覚で、リラックスしながら現場に集中して臨めたんじゃないかなと思っています。

 

写真=佐藤亘/文藝春秋
構成=文春オンライン編集部

INFORMATION

『真実』
10月11日(金)より全国公開

監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジュリエット・ビノシュ/イーサン・ホーク/リュディヴィーヌ・サニエ
原題:La verite
配給:ギャガ
©️2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA
https://gaga.ne.jp/shinjitsu/

 

樹木希林さんはこの映画を観たら何て言うだろう――是枝裕和監督『真実』インタビュー

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