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大衆そば屋の異変「東京で“ゆで麺”を使う店が激減している?」――秋葉原の老舗で聞く

2019/10/15

 大衆そば屋はいま多くの問題に直面している。後継者不足、仕入れ先のかつお節問屋の廃業、製麺所の廃業、消費税などである。

 秋葉原の三井記念病院の近くにある「川一」も例外ではない。

秋葉原から三井記念病院方向へ、高層マンションの角を左折
路地を曲がるとすぐ右に「川一」がある
昭和51年創業の「川一」、黄色い暖簾がきれいだ

 久しぶりに訪問すると、店主の川又武さんが「おお~、ひさしぶりだね」と下町江戸っ子風に小気味よく出迎えてくれた。

「川一」は昭和51年(1976)年に先代の川又一郎さんが創業した店である。名前の2文字をとって店名にしたというわけである。

 先代が亡くなり、奥さんの八重子さんと2代目の武さんが店を守り、今は武さんがほとんど一人で切り盛りしている。

渋いメニュー書き
「川一」店主の川又武さんも元気そうでなにより

一番人気はかき揚げ風の「イカ天」

「川一」はそのつゆがうまいことで定評がある。鰹節と宗田節を使った一番出汁と二番出汁をとり、芳醇な醤油や味醂などで作った濃い目の返しを合わせて作ったつゆは、いわゆる「染まり系」と言われている。甘味は少なくきりっとしまったつゆである。ひと口飲むと、華やいだ生(き)を感じるようなつゆである。「染まり系」といわれる理由は後述する。

 天ぷらは大女将の八重子さんがその味を確立し、今は武さんがその技をつないでいる自家製のもので、かき揚げ、春菊、ごぼう、いか、ちくわ、ソーセージ、あじなどの天ぷらがそろう。早朝から午前中にかけて揚げていくのだが、油切れもよく、カラッとやや硬めに揚げられており、揚げ置きでも十分にうまい。

「いかそば」(550円)。このつゆが「染まり系」で絶品
染まり系のつゆに天ぷらが沁みていく

 中でもイカ天は大人気。スルメイカのげそと身をすべて細目に切ってかき揚げ風に揚げたもので、一番人気である。

 イカ天につゆが絡むとふわっとした衣になり、より一層天ぷらの旨みが花開くというわけである。