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子どもの「いる人」と「いない人」の分断を起こさないために

年間出生数「90万人割れ」の衝撃と受け止め方

2019/10/11
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大都市圏は結婚比率が低く出生率も低迷

 私にもよく結婚相談がありますが、アラフィフに達したいい歳したジジイが「20代の女性と恋愛結婚したい」と言い放つ事案があったり、市場価値がゼロに近い女性が「結婚相手は最低でも年収600万以上」と条件を付けてきて「鏡を見ろ」という状況に陥ったりと、なかなかお前らの相手はしてられんわという問題に行き当たります。なにぶん、民主主義で国民主権の世の中ですので、本人がどう思おうと自由なんですけど、逆に現代日本が自由であるがゆえに自由過ぎて周りから世話を焼かれることもなく年を重ねて結婚するべき年齢を過ぎてしまうという事態は往々にして起きてしまうようです。

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 また、東京都など大都市圏は結婚比率が低く出生率も低迷する傾向にあるので、都市部に若い女性を移住させるべきではないという暴論もちらほらあるわけです。けれども、単純に結婚して所帯を構えると大都市圏から埼玉千葉岐阜三重奈良和歌山へ転居する若い夫婦が増えているだけであって、賢くみんな生きているのだと思い至るわけであります。

子どもの「いる」「いない」で分断してしまう社会

 つまりは、みんな個人個人の思いや関心を追求して良いという自由な日本社会で刺激的に生きているうちに、結婚したり出産・育児するよりも自由で楽で面白い時間を満喫できてしまうという現代特有の罠に直面するのでしょう。結婚はともかく、出産・育児は誰もが不安で、常に楽しいことばかりではありませんし、何よりやってみないと分からないことです。分からないことをやる困難よりは、目の前の仕事や友人関係、趣味を楽しんで生きていたいという選択肢がある限りは、「結婚も出産も、自分の人生の目標ではない」と感じやすい風土はどうしてもあるように思います。

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 でも、人間健康を損ねたり、だんだん身体に自由が効かなくなる40代、50代に差し掛かると、どうしても「ああ、結婚しておけばよかった」「子どもが欲しかった」と後悔するようになるようです。私も子ども4人を抱えて育児に右往左往している毎日ですけれども、独身者に羨ましがられることは確かにあります。子育てや介護をしていると、独身時代に比べてどうしても夜の会合などの付き合いが悪くなりますので、FacebookやInstagramで飲み歩き・食べ歩き画像を垂れ流しているのはだいたい独身男女であるという実例が出てきます。社会が、子どもの「いる」「いない」で分断してしまっていると実感するのは、やはり家庭を構えている層と、独身で社会の前線で頑張っている層とで話が合わないときです。