文春オンライン

韓国人による“壮大な自己批判”の試み『反日種族主義』は一読の価値あり!

タブーに挑んだソウル大元教授が指摘する“慰安婦シンドローム”とは?

2019/10/11
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“慰安婦シンドローム”の背景にある心理とは?

 このウソの慰安婦ストーリーによって慰安婦少女像が全国各地に立てられ、映画や演劇、イラスト、絵本が大量に作られ、政府制定の記念日まで生まれ、元慰安婦たちはまるで国家的・民族的ヒーローのようにもてはやされ、トランプ大統領歓迎の公式晩餐会にまで出席させられている……。

慰安婦像の前でデモをする人々 ©AFLO

 こうした韓国における“慰安婦シンドローム”の背景について李教授は、民族主義以前の前近代的な、いわば部族社会にみられるようなシャーマニズム(呪術)的な心理を指摘する。それに伝統的な“華夷文化思想”に起因する“日本への敵意”が加わり、迷信のような「反日種族主義」が生まれた。「そうした集団においては個人は集団に没我し、近代社会にあるべき“自由な個人”は存在しえない」という。

虚偽だった「吉田清治証言」のことも紹介

 李教授にインタビューした9月下旬、ソウルの名門・延世大学では保守派の論客で社会学者(!)の柳錫春教授が大学の講義の際、「慰安婦は売春婦のようなもの」と語ったとして問題になっていた。受講の学生が外部に“通報”し、それにメディアが飛びつき非難殺到となった。大学は担当講義を中断させ処分を検討中とか。一流大学でも「反日種族主義」から自由でないということである。

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韓国の文在寅大統領 ©AFLO

 本書では「日本軍による強制連行説」の唯一の“証拠”として内外でもてはやされ、その後、日本では虚偽と判明した「吉田清治証言」のことが紹介されている。虚偽だったという“事実”を韓国に伝えたのはこれが初めてではないかと思うが、信じたくないことは知らなかったことにするのも「種族主義」かもしれない。今や宗教化し異論(異端)排除には手段・方法を選ばない慰安婦問題だけに、タブーに挑戦する李教授の覚悟のほどが分かる。