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 スタンドでは国もチームもなくまぜこぜで座らされており、それもまた祝祭感を加速させます。野球やサッカーのようにそれぞれの応援団が分かれているのも悪くはないのですが、両方がまぜこぜでいることで、どのプレーにも喜びの歓声が上がり、どちらにボールが転がっても「いけぇ!」「GOOOOO!」などと力強い声があがります。どこにでもどちらのファンもいることで、どっちに転んだとしても「ため息」に支配されるような瞬間は生まれにくく、とても盛り上がります。

 日本VSスコットランド戦でも前半は日本が攻めて日本側がガーッと盛り上がり、後半はスコットランドが攻めてスコットランド側が盛り上がる。それもあって80分間ずっと叫んでいるようなことにもなったのかなと思います。誰かが常に近くで喜びの声をあげているので、ごく自然に声が出てしまうような雰囲気です。

©フモフモ編集長

こんなときだからこそ全力で「楽しむ」ことを忘れない

 一言でまとめるなら「楽しかった!!」に尽きます。

 猛烈に、劇的に、ものすごく「楽しかった!!」です。

 何の気遅れもためらいもなく、そう言える今の自分。これは決して当たり前のことではありません。折しも10月12日には関東・東海地方に台風19号が上陸し、死傷者を含む多くの被害を出していました。そして試合当日の13日は、台風19号は東北地方を通過し、さらに被害を拡大させていました。このラグビーワールドカップでも12日の2試合、13日の1試合が中止(延期ではなく)になっています。

 特に13日に中止となった試合は「何故、またしても」とうなだれるようなものでした。釜石鵜住居復興スタジアムで行なわれるはずだったナミビアVSカナダ戦。東日本大震災によって多数の死者行方不明者が出た岩手県沿岸部。その復興の象徴として、未来への希望として、かつてこの地で日本のスポーツ界を席巻した「新日鉄釜石」の誇りを胸にラグビーワールドカップの開催都市に立候補した釜石市。

 もともとは学校であった場所、それはすなわちあの震災のなかで避難場所となり、多くの命が救われた場所であるわけですが、そこに築かれた新たなスタジアムで予定されていた貴重な2試合のひとつでした。数は少ないながらも、その2試合が復興の象徴となるはずだと、町をあげて取り組み、ようやく開催の時を迎えたところでした。それが今度は台風によって妨げられる。倒れて、立ち上がって、また倒される。「何故、またしても」と思わずにはいられなかったことでしょう。

岩手・釜石鵜住居復興スタジアムで行われたウルグアイ-フィジー戦 ©AFLO