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2019/10/20

(1)「メリハリ」――W杯中にゴーカート?

 ジェイミーを表現するキーワードのひとつが(1)「メリハリ」です。

 例えば、しばらく期間が開いたあとに日本代表で集まって最初の練習をするときは、何か悪いところを見つけて怒鳴り散らす。そうすると選手たちはちょっと緊張する。そうやって緊張感を高めて、いい練習につなげる。「メリハリ」をつけてチームの気持ちを高めるんです。

 ジェイミーにとって「メリハリ」は体に染み付いたもの。20年前の印象的なエピソードがあります。

 そもそもジェイミーは、1969年ニュージーランド(NZ)生まれ。NZはこれまでにW杯で3回優勝している、ラグビー界の「横綱」です

 ジェイミーも1995年のW杯はオールブラックス(NZ代表の愛称)の一員として出場し、準優勝しています。その後来日し、99年のW杯は日本代表でプレーしました(※当時は2カ国にまたがって代表になることが可能でした)。

 現役時代は196cm、105kgの恵まれた体格で、フォワードの第3列(NO.8、ロック)のパワフルなプレーヤーとして活躍。今でも日本代表の誰よりも身長は大きいですね。

平尾誠二監督との縁

 じつは99年の日本代表にジェイミーさんを起用したのは当時の平尾誠二監督でした。NZ人を3人抜擢したんですが、これは平尾さんでなければ出来なかったでしょう。普通、日本人監督は、元オールブラックスの選手が入ってくると彼らが中心になってしまい、自分の立場が無くなると考えますから。平尾さんはスターだったから、そういうことは気にしなかったんですね。

1999年のW杯期間中に練習を行なう日本代表。当時の平尾監督(右から2番目)の話に耳を傾けるジェイミー選手(中央) ©AFLO

 じっさい、日本代表はオールブラックス出身のジェイミーたちが入ってきて、最初はスゴく緊張していた。でもジェイミーたちはすごくフレンドリーで感じが良かったから、すぐ打ち解けられた。それは当時の選手がみんな口を揃えて振り返りますね。

 ここでもジェイミーは「メリハリ」を利かせます。当時の代表、中村直人(プロップ)から聞いた話ですが、日本はW杯でサモア、ウェールズに連敗してしまう。「最後のアルゼンチン戦は勝とう」というときに、ジェイミーが「気分転換だ」と言って、代表選手みんなをサーキット場のゴーカートに誘うんです。そこでレースをしてタイムを競った。

「W杯大会中にこんな風に切り替えるんだと、新鮮でした」と中村にとっては忘れられない思い出になっているそうです。ジェイミーは当時もそうやってチームの良い雰囲気作りを心がけていた。一方でミーティングでは「でもW杯は本当に厳しい場所なんだ」と真剣な表情で教えてくれた、と。

 モチベーションをコントロールするために「メリハリ」が大事なことを知っているんですね。