国賓来日時の羽田空港などでのお出迎え。または皇居、迎賓館、首相官邸などでのお出迎え。そうしたときに、ひときわ規律正しい動きを披露している一団を目にしたことがないだろうか。着剣した銃剣を手にビシッとした制服を身にまとい、号令に一糸乱れぬ動きを見せる――。この集団は、陸上自衛隊第302保安警務中隊から編成される特別儀仗(ぎじょう)隊。彼らが披露する特別儀仗は、日本ではこの第302保安警務中隊の隊員しか担うことのできない“唯一無二”の任務なのだ。いったい、この唯一無二の任務を果たす隊員とはどんな人物なのか。そして特別儀仗ならではの厳しさや面白さとは? 陸上自衛隊第302保安警務中隊の飯田博臣2等陸曹に話を聞いた。

(全2回の1回目/#2へ続く)

特別儀仗を行う陸上自衛隊第302保安警務中隊

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「国賓の来日」「防衛大臣の離着任」での儀式のようなもの

――まず、そもそも第302保安警務中隊とはどのような部隊なのでしょうか。

「陸上自衛隊には例えば普通科、機甲科などいろいろな職種があるのですが、その中の警務科職種にあたります。保安警務中隊は各方面警務隊に配属されていまして、第302保安警務中隊は東部方面警務隊の所属。そして我々だけが特別儀仗を担当することができることになっています」

特別儀仗服を着た飯田博臣2等陸曹

――その特別儀仗というのは、どのようなものなのでしょうか。

「国賓が来日した際や防衛大臣・副大臣・政務官の離着任時に行う儀式のようなもので、我々第302保安警務中隊と陸上自衛隊中央音楽隊で行います。特別儀仗隊には3個小隊があり、儀仗指導等を行う本部要員を含めて通常約100名で儀仗を実施しますが、状況によっては人員を減らして儀仗を実施することもあります」

――それはその特別儀仗の重要性によって変わる、ということですか。

「いえ、そういうことではありません。受礼者や儀仗実施場所の広さ等を鑑みて防衛省や外務省等からの指示により編成が決められています」

日越首脳会談での第302保安警務中隊(2017年)。国賓を迎える際の特別儀仗は大きな仕事のひとつ ©時事通信社

「23年、700回以上」の特別儀仗に参加

――特別儀仗はどれくらいの頻度で行われているのですか。

「国賓の来日時などに行うので定期的ではありません。間が空くこともありますし、サミットなど複数の国賓が来日する際には1日に何度も実施することも。通算では2900回以上(2019年10月9日現在)、特別儀仗を実施しています」

――飯田2曹ご自身はどのくらい参加しているのですか。

「私は平成8(1996)年に自衛隊に入隊して新隊員教育を終えてからずっと保安警務中隊にいますから、もう23年くらいやっています。だから細かい数字までは覚えていないのですが、700回以上にはなっていると思いますよ」