昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/10/23

genre : ニュース, 社会

「9人が横から見て1人に見えるのが理想」

――700回! ということは特別儀仗の通算実施回数の2割以上に飯田2曹が関わっているということになるんですね。となるとだいぶベテランになりますよね。もう特別儀仗も慣れたもの……。

「そうですねえ、中隊の中ではベテランの方になってしまいますね(笑)。でも、今でも儀仗のたびに緊張しますよ。儀仗隊の動きはほんの少しのズレでもダメ。ミリ単位で動きを合わすことが求められます。1個小隊で横に9人ずつ3列に別れて並ぶのですが、並んだ9人が横から見て1人に見えるというのが理想なんです。ですから少しでも気を抜き身体が前のめりになったり、手に持っている銃がほんのわずか前に傾いたり、そういうことがあれば、儀仗は台無しです。訓練ではまだしも、本番では絶対に許されないこと。ですから、700回以上やっても緊張はするし、緊張感を持っていなければいけないと思っています」

約23年、特別儀仗に参加してきた飯田博臣2等陸曹
市ヶ谷駐屯地での特別儀仗の訓練風景。横に9人ずつ3列に別れて並ぶ。ミリ単位で動きを揃える

――ミリ単位とはすごいですね……。訓練の様子を拝見しましたが、我々が見ても何がダメなのかわからなかったのに厳しい指導の声が飛んだりもしていました。

「彼らはみなたくさん訓練を積んできた隊員たちですから、練度は相当に高いんです。だからみなさんが見ても何が良くて何が悪いのかはほんの微々たる差ですからわからないと思います。でも、我々が見たら一目瞭然。訓練でしっかりと合わせて、本番を迎えています」

 
素人目にはどこがずれているのか分かりづらいが、ひとつひとつ動きを確認していく

つま先は60度、足の開きは25cm

――相当な厳しさが伝わってきますね。なんでも、足を開く角度とかも決まっているとか。

「つま先は60度と決まっていますね。あと“整列休め”のときには足を25cm開く。だから誰か1人でも少しズレているだけで目立ってしまうんです。これを身につけるには……もう訓練しかないですね。矯正具がありまして、最初は毎回つま先にあてがわれて『違う!』と怒られて。その繰り返し、何回も何回もやるしかない。姿勢にしても同じです。人間の身体はどうしたって楽な方にいくんです。何も力を入れずに自然に立つと、ほとんどの人は前傾します。そこをぴしっと真っ直ぐに正していく」

つまさきの角度は60度
銃剣の上げ下げのタイミングを揃える

――言葉にすれば簡単そうですけど、10秒20秒だけという話じゃないですもんね。

「少し気が抜けると、呼吸するだけで身体が前に出たりするんですよ。まあ、これもミリ単位だから皆さんにはわからないと思いますが(笑)。あとはまばたき。もちろん人間なのでまばたきを絶対にしないというのはムリですが、できるだけしないようにする。これは……訓練というよりはただただ我慢するしかないですね」