一番厳しいのが「アイロンがけ」と「靴磨き」
――儀仗服は惚れ惚れするほどにぴしっとしていますよね。
「新隊員が入ってきて一番厳しいのがアイロンがけと靴磨きなんです。訓練服に2本線が入っていたりすると真っすぐ立っていても真っ直ぐ見えなかったりするので、アイロンがけはとても大事。靴磨きも同様で、普通に磨くのではなくて我々は鏡のようになるまでピカピカに磨きます。これは入隊してから一個上の先輩がみっちり教えてくれる。これがまた大変なんですよね(笑)」
――では飯田2曹もアイロンがけの達人。
「おかげで家では私が子供の服までアイロンがけ担当ですから。たまには妻にやってくれと言うんですけど、『パパのほうが上手でしょ』って言われちゃって(笑)。まあ、実際私がやったほうが早いんですけどね」
――とはいえそこまでアイロンがけに熟達するなど、若い男性隊員にとってはなかなか大変そうです。
「新隊員はまず基本教練を約3カ月くらいミッチリやります。毎日毎日姿勢を見られてミリ単位の動きを身体に叩き込む。それを1日中やるともう疲れてクタクタになるんですけど、その後部屋に戻ってからアイロンがけと靴磨き。部屋に戻っても先輩と同部屋だから落ち着かないのに、そこで慣れないアイロンがけと靴磨きを徹底的にやらされるわけですからね。これは厳しいですよ。でも、こうした厳しいところで育ってくることによって、新しい後輩たちにも教えていくことができて儀仗隊の伝統が継承されていくのではないかなと思っています。儀仗隊員なのは誰が見てもすぐにわかりますから、それでいて靴が汚かったら恥です」
「3カ月の基本教練と審査」特別儀仗隊に仲間入りするまで
――今のお話で新隊員の基本教練というのがありましたが、儀仗隊に入るためにはそこでの教練が欠かせないということですか。
「うちの部隊に配属されたら、まずは約3カ月の基本教練。その後に儀仗審査というテストをして、それに合格すれば特別儀仗隊の仲間入りです。最初の基本教練で一番大変なのは……そうですね、個癖の矯正でしょうか。人間は誰しも個人個人の癖がありまして、基本教練の段階ではなかなか直らないですね」
――飯田2曹も苦労されたのですか。
「私の場合は普通にまっすぐ立っているつもりでも左肩が少しだけ上がってしまうんです。でもそれを無理やり真っ直ぐにしていると、自分の体のバランスが崩れているような気がしてすごくやりづらい。こういう癖がみんなあるんです。横から見たら少しだけお腹が反っているとか、膝と膝の間が開いているとかですね。学生のときにやっていたスポーツも関係しているのでしょう」