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訓練では「一番下手」、本番では「一番うまい」と思ってやる

――やはり訓練でも本番同様の緊張感を持って、ということになりますよね。

 

「もちろん緊張感は大事。私も訓練だって緊張しますし、指導するときには緊張感を持った訓練をやらせることが必要なんです。あまりフレンドリーに優しくやりすぎてもピリッと感がなくてうまくならない。班訓練の段階で緊張感を与えて早く動きを揃えていけるかどうか、ですね。ただし、緊張感を作るだけでも指導する立場としてはどうだろう、と。すごい集中して厳しくビシッとやって、合間にはリラックス。そのメリハリをうまく作っていくとだんだん全体の士気があがっていく。団結が生まれてくる。それを小隊訓練、中隊訓練に持っていく」

――そういう指導するという立場のお仕事にもなかなかやりがいを持っている感じですね。

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「自分が思っているのは、訓練では一番下手だと思ってやって、本番では一番うまいと思ってやる、ということ。私は少年野球のコーチもしているのですが、儀仗隊での指導が役に立っていて、『練習では自分が下手だと思って、試合では一番うまいと思ってやろう』といつも言っています。まあ、少年野球では厳しくというわけではなくて楽しく、ですけどね(笑)」

銃を掴んだときの“チャッ!”というきれいな音

――最後に、飯田2曹が儀仗にあたって一番大事にしていることを教えて下さい。

「儀仗隊長の号令にしっかり反応することですね。わずかに遅れたり早くいったりするだけで乱れてしまって儀仗は台無しですから。指導の立場でもそこを一番に見ています。最初の銃を掴んだときの音、それがずれるんです。揃うと“チャッ!”というきれいな音がするんですけど、少しズレたら音の幅がひろがるというか。前列に立っていてもわかりますよ。後ろで少しズレてるなあとか。でもねえ……早いですね。ついこの間まで列の中に入ってバリバリやっていたと思ったら、もう40歳を超えて指導していく立場ですから。即位の礼での儀仗も非常に楽しみにしているのですが、私は儀仗本部で隊員たちをサポートする立場ですから。だからこれからも自分の技量を高めつつ、儀仗隊の伝統を後輩たちに伝えていければ、と思っています」

 
 

 即位の礼でも晴れ姿を披露した特別儀仗隊(※11月10日の天皇・皇后両陛下のパレード「祝賀御列の儀」でも特別儀仗が予定されています)。毎年恒例の自衛隊音楽まつりでも、彼ら儀仗隊が登場してオープニングを迎える。まさしく自衛隊の“象徴”にして“花形”とも言えるのが、第302保安警務中隊の特別儀仗隊なのだ。彼らを見たときには、一糸乱れぬ動きの裏にある、受け継がれてきた伝統と隊員たちの訓練の積み重ねにも、思いを馳せてみてはどうだろうか。

写真=佐藤亘/文藝春秋

(全2回の2回目/#1まばたき“禁止”の一団――陸上自衛隊の花形「特別儀仗隊」を知っていますか?から続く)