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「球速への期待はあるが、まだ耐えられる体ではない」

 これは佐々木の鍛え方が足りないという意味ではなく、身体的な成長期を終えていないということ。大船渡の國保洋平監督は「球速への期待はありますが、まだ耐えられる体ではない」と語った。春以降は基本的に強度を落とした投球に終始した。

昨夏、全国高校野球選手権岩手大会での佐々木 ©文藝春秋

 また、佐々木の取材の受け答えは小声で言葉数も少なく、記者泣かせとして知られている。まだ高校生であり、今後変わっていく可能性もあるが、元サッカー日本代表の久保竜彦を彷彿とさせる。

 今夏の岩手大会決勝やU-18日本代表での様子を見て、佐々木に対して「登板回避」「もろい」という印象を受けた野球ファンも多かったに違いない。だが、佐々木の体はまだ成長段階にあり、投手としてのピークはまだまだ先にある。故障のリスクがあるなら、三度叩いて渡るはずの石橋を五度叩いてもいい。

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170キロ超えのロマンと、リスクと

 広島東洋カープに苑田聡彦さんという名スカウトがいる。スカウトとして40年以上のキャリアを誇り、黒田博樹ら数々の名選手を発掘してきた。その苑田さんに佐々木について聞くと、こんな答えが返ってきた。

「スピード、球の質、コントロールとこれだけそろったピッチャーは今まで見たことがない。ユニホーム姿も格好いい。歩いているだけで、後光が差しているように見えるよね」

 もしかしたら、これから体が成熟すれば170キロを超えるようなボールを見せてくれるかもしれない。そんな期待がある反面、育成するまでには時間がかかる可能性もある。また、万が一これだけの大物を潰したとなれば、所属球団に対するバッシングも予想される。佐々木朗希という投手は、そんなロマンとリスクが同居している。