奥川は「松坂大輔や田中将大の高校時代よりも上」
一方、「安心の奥川」はどんな投手かは多くの野球ファンが知っているだろう。今夏の全国高校野球選手権大会では、星稜を準優勝に導いた甲子園のスター。とくに3回戦の智辯和歌山戦で見せた快投は記憶に新しい。無死一、二塁から始まるタイブレーク2イニングを含め、14イニングを投げて被安打3、奪三振23と全国屈指の強打線を抑え込んだ。
奥川の長所は、どんなに調子が悪くてもそれなりに試合を作れるところにある。試合前の囲み取材で相手打線への対策を聞いても、奥川は「対戦してみないとわかりません」と答える。打者と対峙して、顔色や気配を察知してピッチングを変える。そんな有機的な投球ができるから、コンスタントに結果を残せるのだ。プロで言えば菅野智之(巨人)の投球イメージに近い。
取材への受け答えは、常に爽やかで謙虚。佐々木と対比されても、「自分とは格が違うので恐れ多い」というようなニュアンスの反応を見せることが多い。プロでもファンやメディアから愛される存在になりそうだ。
前出の苑田スカウトは、奥川については「松坂大輔(前・中日)や田中将大(ヤンキース)の高校時代よりも上」と語っていた。つまり歴史的な高校生右腕の逸材が、同じ年に出現してしまったということなのだ。
佐々木を指名した球団はすべてパ・リーグ
10月17日のドラフト会議では佐々木に4球団、奥川に3球団の指名が集まった。先発投手陣が壊滅的なヤクルトと人気球団ゆえ結果が求められる巨人と阪神が奥川を指名していたのが、いかにも「安心の奥川」を象徴していた。一方の佐々木を指名したのは、日本ハム、西武、ロッテ、楽天とすべてパ・リーグの球団である。「誰も見たことのない野球を見せたい」という気概を感じさせた。
抽選の結果、佐々木はロッテ、奥川はヤクルトと交渉権が確定。これから入団に向けて交渉することになるが、入団は確実だろう。
2人の金の卵がプロで孵化できるかは、神のみぞ知る。できることなら大きな故障をすることなく、日本球界の宝として輝き続けてくれることを願うばかりだ。