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日本人は知らない大坂なおみの3つの側面「日本国籍はむしろプラス」「起業・投資に興味津々」

2019/10/31
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日本人の知らない側面2:多様なルーツにマーケターが大喜び

 2019年10月には日本国籍を選択したが、そのことがアメリカでネガティブに働く可能性は低いだろう。日本を含める多様なルーツこそ、人気の要因になっているからだ。ハイチのルーツを持ち大阪で生まれ幼少期より米国で育った大坂なおみの多文化的な側面は、主要メディアにおいて「次世代の象徴」として賞賛されることが多い。

大坂なおみ選手とセリーナ・ウィリアムズ ©getty

 欧米メディアが大坂なおみを評す際のもう一つの決まり文句は「マーケターが大喜びする存在」といったもの。多様なルーツを持つ大坂は、日米ハイチのみならずさまざまな地域で支持を獲得できるポテンシャルがある。マーケティング業界からすれば「さまざまな地域で収益を見込めるスター」となるわけだ。

 事実、彼女をグローバル・ブランドアンバサダーに起用したMastercardは、契約に際して「日本のみならず世界中の若き人々にインスピレーションを授ける選手」と讃えている。大坂本人は、ルーツについて問われても「私は私」と返しているのだが、その姿勢も、複雑なアイデンティティを生きる若者やマイノリティ層からリスペクトを得る要因だろう。

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「私のような人が頂点に立つのは見たことがない」

 スポーツ界で絶大な影響力を誇るNikeがadidasと激しい競争を経て巨額契約したことも働いて、早速2019年度SportsPro Media『もっともマーケタブルなアスリート』第1位に選出されており、経済誌Forbes『世界で最も稼ぐ女子スポーツ選手ランキング』ではウィリアムズに次ぐ第2位をマークしている。スポンサーシップ契約も華やかだ。P&Gや資生堂、セイコーといった大企業のほかに、国際展開を狙う新興ブランドともディールを結んでいる。

©iStock.com

 前出の、静かで謙虚なイメージも広範囲な人気とマーケティングの鍵になっている。とくに北米において、スター・アスリートは、話し上手で派手な人柄が多い。そのなかで「あまり話すことに長けてない」と自己申告する大坂はまさしく特異であり、本人ですら「私のような人が頂点に立つのは見たことがない」と認めるほどである。

 SportsPro Mediaに取材されたマーケターは、大坂の内気さがブランドに落ち着いた印象を与えるメリットを指摘している。消費者に親近感を与えるイメージも重要だ。ソーシャルメディアが影響力を高める昨今、若年層は完璧なスターではなく、彼女のような共感できる存在を求める傾向にある。