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日本でもベストセラーの韓国発“フェミニスト”本が映画化 現地の男性記者の感想は?

日本でもベストセラーの韓国発“フェミニスト”本が映画化 現地の男性記者の感想は?

『82年生まれ、キム・ジヨン』

2019/11/01
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 高校生のときに知らない男性に跡をつけられそうになり泣きじゃくる彼女を迎えに来た父親からは、スカートの丈を咎められ、「誰に対してもいい顔をするな」と逆に責められてしまう。

主人公の生きづらさの背景は韓国社会に残る儒教の影響か

 主人公の生きづらさの背景には、儒教の影響を強く受けた韓国社会のシステムが浮かび上がる。

 主人公が再就職の夢を断念したのも、いまだ企業によって残る男女の賃金格差を想起させ、また、最近では大きく変わりつつあるといわれるが、韓国での姑と嫁の葛藤も思い起こさせる。韓国では嫁はあくまでもよそ者扱いされ、家に入れないという意味合いから別姓でもあるし、自分の息子、子孫を支える存在としての役割が求められる傾向も完全に薄れてはいない。

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 昔は女児が生まれると里子に出した家もあったといわれ、子孫を継ぐ男児を産むことが女性の絶対条件という感覚もまだ密かに残る。長男と結婚し二人の娘を持つ30代の知り合いは70代の舅から、「跡継ぎを生むように再三言われて、今の時代にそんなことを言う? とあきれるんだけど、舅は真剣。「高学歴の人だからもっと開かれた考えの持ち主だと思っていたんだけど、言い返しても無駄だから、仕事が忙しいと避けている」とこぼすのを聞いて、驚いた。

©iStock.com

日韓の反応の違い、なぜ?

『82年生まれ、キム・ジヨン』の原作を読んだ韓国女性は「怒った」と言い、日本女性は「泣いた」と聞く。

 同じように広く読まれていても、こんな反応の違いはどこから来るのだろう。

 映画では主人公は自分の声を取り戻す。

 さて、後日談。

 映画について話を聞いた前出50代後半の男性は娘にこう伝えたという。

「誰にも負けないくらい勉強もしたのだから、やりたいこと、好きなことを思う存分やって、結婚はそれからでもいい」

 実は韓国ではこんな親世代(50~60代)も増えているのだそうだ。

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