餃子は注文してから包み始める
ビールのアテにでてきたお新香がうまい。こういうところに、店の本領が出る気がする。しかも驚いたのは、注文してから餃子を包み始めたことだ。
「包んで置いとくと、皮がしけっちゃうでしょ。注文が入ってからこうしたほうが、お客さんはおいしく食べられるからさ。焼く前にこうしないと、皮の食感が違っちゃうからね」
たしかに手間をかけているだけあり、餃子は焼き具合も味も絶品。ニンニクも入ってはいるが、きつすぎない程度。だからビールがどんどん進む。
「自分で言うのもおかしいけど、餃子はけっこう人気あるのよ」
有楽町の「元祖札幌や」で8年修行
父親は戦前から、大井町で日本そばの店を経営していた。そのため明さんは中学を卒業するとき、「お前は次男坊だから店を継げ」と言われたという。
「でも、ちょうど反抗期でもって、『冗談じゃねえ、俺、飲食業なんてやんねえよ』って反抗して、それで中学を出てから機械工になったの。でも15年経って30になったらね、結局この道に入っちゃってさ。(現在も帝国劇場の近くにある)有楽町の『元祖札幌や』で8年間ぐらい働いてたんです」
ちなみに奥様とも札幌やで知り合ったというので、その時期がいろいろな意味で分岐点になったともいえそうだ(奥様は12時40分ごろにはお帰りになるそうで、お会いできなくて残念)。ただし8年を過ぎて店長を任されたころには、いろいろ感じることもあったらしい。
「店長というのは宮仕えだから、サラリーマンと同じじゃない。社長からも部下からも文句を言われるしねえ。性格的に人を使うことがあまりうまくないし、フランチャイズの店だと、ある程度会社の決めた味で出さなくちゃならない。だから札幌やを辞めるとき、社長にのれんはいりませんと断ったんですよ。それでここを開いたんです。ここなら、自分で自由にできるじゃない。いま、43年目です」
しかし、東京出身なのに、なぜこの地を選んだのだろう?