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「あとを継いでほしいとは思ってない」船橋郊外の中華料理屋で77歳店主が作り続ける“絶品餃子と味噌ラーメン”

B中華を探す旅――船橋法典「江戸一」

2019/11/05

genre : ライフ, グルメ

note

餃子は注文してから包み始める

 ビールのアテにでてきたお新香がうまい。こういうところに、店の本領が出る気がする。しかも驚いたのは、注文してから餃子を包み始めたことだ。

「包んで置いとくと、皮がしけっちゃうでしょ。注文が入ってからこうしたほうが、お客さんはおいしく食べられるからさ。焼く前にこうしないと、皮の食感が違っちゃうからね」

餃子は注文してから包み始める

 たしかに手間をかけているだけあり、餃子は焼き具合も味も絶品。ニンニクも入ってはいるが、きつすぎない程度。だからビールがどんどん進む。

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「自分で言うのもおかしいけど、餃子はけっこう人気あるのよ」

焼き具合も味も絶品!

有楽町の「元祖札幌や」で8年修行

 父親は戦前から、大井町で日本そばの店を経営していた。そのため明さんは中学を卒業するとき、「お前は次男坊だから店を継げ」と言われたという。

「でも、ちょうど反抗期でもって、『冗談じゃねえ、俺、飲食業なんてやんねえよ』って反抗して、それで中学を出てから機械工になったの。でも15年経って30になったらね、結局この道に入っちゃってさ。(現在も帝国劇場の近くにある)有楽町の『元祖札幌や』で8年間ぐらい働いてたんです」

年季が入った店内は、細部まで掃除が行き届いている

 ちなみに奥様とも札幌やで知り合ったというので、その時期がいろいろな意味で分岐点になったともいえそうだ(奥様は12時40分ごろにはお帰りになるそうで、お会いできなくて残念)。ただし8年を過ぎて店長を任されたころには、いろいろ感じることもあったらしい。

「店長というのは宮仕えだから、サラリーマンと同じじゃない。社長からも部下からも文句を言われるしねえ。性格的に人を使うことがあまりうまくないし、フランチャイズの店だと、ある程度会社の決めた味で出さなくちゃならない。だから札幌やを辞めるとき、社長にのれんはいりませんと断ったんですよ。それでここを開いたんです。ここなら、自分で自由にできるじゃない。いま、43年目です」

 しかし、東京出身なのに、なぜこの地を選んだのだろう?