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2019/11/08

何のための大学なのか?

 日本の初等中等教育が優れている、というのはOECDがやっている学力テストで日本が上位にいるからですけど、これは本当の意味で現場の教師がギリギリのところで頑張って子どもに学力をつけさせようと努力しているからに他ならないと思うんですよ。でも、そういう優れた日本の子どもたちが大学にいった途端に日本の教育はうんこだと批判される対象になってしまう。

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 記述式の試験問題も、50万人が受ける大学受験において適切に発想力を試験できるのかという批判は繰り返し投げつけられ、一方で推薦入試やAO入試は意欲こそ問われるものの本当に学生の質的担保に資するものなのかは分からないうちに制度だけは定着して有力大学だけが優秀な学生の青田買いするツールになってしまいました。

 たぶん、その制度を導入したときは人物本位の入試をしたいとか、学問に志のある人を大学は迎えたいとか、一芸に秀でた特殊な才能に光を当てたいとか、各々立派な理由はあったはずなんですよね。それがなぜか、制度を始めて運用するごとにまるで裏口入学なのかとばかりに各予備校各高校がAO入試対策や推薦を勝ち取るためのテクニックに奔走するものだから、肝心の入学を志す高校生浪人生の側が右往左往せざるを得なくなる。

 いずれそういう子どもたちも大半は大学を卒業したあと企業に就職するにあたり、今度は企業の側が「大学は充分な能力を学生に備えさせていない」という批判をすることになります。大学入試がすべての教育におけるベンチマークになり、評価基準になっている割に、その卒業した先の企業が日本の大学教育に疑問を投げかけ、一方で、大学は研究能力の低迷で論文発表数も伸び悩んでいるのであれば、何のための大学なのか、日本社会・経済にどう大学が役立とうとしているのか分からなくなってしまいます。

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さまざまな問題が同時に押し寄せている大学教育

 突き詰めれば、どういう大学教育を日本社会では必要としていて、それを実現するためにどのような予算や組織、入試、育成カリキュラムを組むべきなのか、誰もその辺のグランドデザインを組んでいないので、文科行政ごとすごい勢いで漂流しているんじゃないかと思うんですよね。

 科研費の問題然り、潰れそうな大学の問題然り、やってきたけど行方不明になる留学生がたくさん受け入れられる学校法人然り、さらには自治体から切り離された独立王国となっている各教育委員会然り……。さまざまな問題が同時にどーっと押し寄せて、単なる「制度疲労ですね」というにはあまりにも方針がハッキリしない我が国の高等教育はどう仕切り直されるべきなのか、一度きちんと考えたほうが良いのではないかと思います。

 その点で、萩生田光一さんが「身の丈」失言で問題大爆発するのもまた、日本の荒廃した大学の有り様も含めた大学入試改革の問題点を浮き彫りにしてくれた、という意味で良かったのではないかと思ったりもします。良くないけど。

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