ビデオを撮りたくなる瞬間には、面白いコンテンツをつくりたいということに加えて、かわいい自分を残したいというニーズが隠れているはずだという、うまい着眼点で、その設計通り情報が拡散されていた。
ハッシュタグで広告コンテンツに登場できる
③プチ承認欲求の充足
SNSと承認欲求は切り離せない。その問題を考えるためには、ユーザー自身の心理はもちろんのこと、情報アーキテクチャがいかに設計されているのかについても目を凝らす必要がある。
TikTokを立ち上げると、「フォロー中」と「おすすめ」の二つのタブが表示され、もともとフォローしている人の投稿を見るか、きっと気に入るであろうとユーザーの好みの動画を学習したAIによるレコメンドに沿った動画を見るか、選ぶことができる。後者の「おすすめ」としてレコメンドされると、多くの人にリーチすることができるというわけだ。
さらにTikTok内には、「#広告で有名になりたい」や「#地上波にでたい」「#おすすめのりたい」というハッシュタグがある。このハッシュタグに参加することで、TikTok内の広告コンテンツに登場できる(=有名になれる)ため、フックアップされたいというユーザーの承認欲求に働きかける効果がある。
そうしたユーザー数の増加にあわせて、TikTokを活用した企業プロモーションも非常に盛んになっているし、TikTokで人気が出た楽曲はヒットチャートにも影響を与えることから、音楽レーベルも着目して連携を進めている。最近ではTikTok内で、音楽を志す若者を発掘するオーディションも実施している。
筆者は、承認欲求というほど大仰ではない、このようなSNS上のちょっとした承認欲求を「プチ承認欲求」と呼んでいるが、まさにこのプチ承認欲求がTikTok利用を促す重要な要素に他ならない。そしてその際、コンテンツとの出会いを機械学習(AI)の力を借りて精緻化している点も重要な特性である。