日本政府はこのアメリカの動きを見逃してはならない。アメリカの動きをテコに使って韓国政府を説き伏せる必要がある。
11分間の話し合いの中で、安倍首相は文氏にこう伝えたという。
「元徴用工らへの請求権問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で解決済みで、韓国側が国内問題として解決すべきだ。外交当局間の協議を通じて懸案を解決したい」
これまで日本政府が主張している原則的立場である。正論だ。主張はぶれていない。説得力があり、評価できる。
韓国はアメリカの言動に敏感になっている
ここでアメリカがGSOMIA継続を求めて韓国を揺さぶっている状況を利用しない手はない。
アメリカの動きに合わせ、韓国に適切な対応を求めるのだ。できればアメリカにそれを言わせることである。その言葉は遠回しで構わない。水面下の調整的な発言でもいい。
安倍首相とトランプ米大統領と親密さは、文氏もよく知っている。韓国はアメリカのちょっとした言動に敏感になっている。効果はあるはずだ。
12月下旬には中国で日中韓の首脳会談が行われる。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が顔を出すと、話がこじれる。日本政府はそれまでに日韓改善の糸口をしっかりつかんでおきたい。
韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長は10月5日、東京都内で講演し、「徴用工問題の解決に向けた新たな立法措置を検討中だ」と明らかにした。日韓両国の企業や韓国政府が関与する基金を設立し、元徴用工らへの賠償を肩代わりさせる案だというが、「韓国側が国内問題として解決すべきだ」との日本政府の原則から外れる。
ちなみに文議長は、慰安婦問題を巡って「天皇陛下の謝罪が必要だ」との今年2月の発言について、「日本の方々の心を傷つけた。申し訳ない」と陳謝した。当然である。なぜもっと早く謝罪できなかったのか。
日韓関係の悪化は北朝鮮を喜ばせるだけだ
「不信感を深めていた両首脳が、ようやく向き合ったことは一歩前進だ。日韓関係は元徴用工問題に端を発し、極度に悪化した。これを、本格的な関係改善につなげてほしい」