飲食店やコンビニなどで働く外国人の姿は、今や珍しくない。むしろ日本には、外国人なしには成り立たない産業が次々と現れている。NHK取材班は、そうした外国人“依存”の実態を総力取材した。第1回は、人手不足を外国人で補う農業の現場について――。(第1回/全3回)
※本稿は、NHK取材班『データでよみとく 外国人“依存”ニッポン』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
外国人に“依存”する日本の農業
コンビニや飲食店、建設現場などで働く外国人の姿は、東京などの大都市部だけではなく全国各地で珍しくなくなっている。人手不足に悩む現場からは、「外国人はもはや欠かせない存在」という声も聞こえてくる。
ではその実態は今、どうなっているのだろうか。私たちはまず、産業別に、働く人に占める外国人労働者の数を調べてみた。分析は産業別、年代別の労働者数がわかる国勢調査を基に行った。
最も外国人労働者が多いのは製造業で26万人余り。それでも割合で見てみると約2パーセント、50人に1人程度とはそれなりの割合だが、すごく多いという印象は受けないだろう。
しかし、担い手不足が深刻な20代から30代に絞ると、その割合はぐっと高まる。最も割合が高いのは農業で、約7パーセントと14人に1人が外国人。次いで漁業は16人に1人、製造業では21人に1人。“依存”とも言える状況が見えてきた。
“依存率”の最も高い農業の現状を調べるため取材に向かったのは、北海道に次いで全国2位の農業産出額を誇る茨城県だ。「首都圏の台所」とも呼ばれる農業大国だが、取材した農家の男性は「外国人がいなければ、東京から野菜が消える」とまで言うほどである。
小松菜を選別するのは中国やベトナムの若者たち
取材で訪れたある農家では5、6人の若者たちが収穫したばかりの小松菜を選別していた。黙々と作業に励む若者たちの1人に声をかけてみると、返ってきたのは「ニホンゴ、ワカラナイ」の言葉。みな、中国やベトナムなどから来た技能実習生だった。実習生たちが栽培した小松菜はその日のうちに出荷され、東京のスーパーに並ぶ。