「実習生を受け入れることで収穫量が増え、人手があるので耕地面積を増やし、さらに実習生を増やすという循環でどんどん売り上げを伸ばす農家が増えています。もはや実習生がいなければ茨城の農業は成り立たないのです」(JA茨城県中央会の幹部)
「いい実習生」の奪い合いが起きている
実習生がいるからこそ維持できた側面のある「首都圏の台所」の看板。しかしその先行きには不安もある。
先ほどのメロン栽培をやめた農家の男性も「今は悔いはない」と話す一方で、不安も漏らした。
「最近は他の産地も実習生を増やしていて、いい実習生に来てもらうのが難しくなってきています。もし実習生がいなくなれば、今の規模の耕地はとても維持できない。そうなったら、農業をやめるしかないでしょう」
日本側の窓口として鉾田市の農家に実習生を送っている監理団体の幹部で、自らも農業を営む男性もこう話す。
「他の地域や産業との実習生の奪い合いは激しくなってきています。中国もベトナムも国内の賃金が上がる中で、いつまでも技能実習生として日本に来てくれる人材がいるだろうか。実習生が確保できなくなったら、茨城の農家の多くは立ち行かなくなる。そうなると東京から野菜が消える……」
賃金や待遇の不満がSNSですぐに広がる
中国やベトナムなどからやってきた技能実習生たちの中には、配偶者や子どもを故郷に残してきた人もいる。そんな実習生たちにとって、スマートフォンは手放せないもの。休憩時間や一日の仕事が終わった後にはSNSやテレビ電話ができるアプリなどで家族と連絡を取り合う姿が見られた。
来日している実習生同士もSNSで情報を交換し合っているので、「あの地域は賃金が低い」、「待遇が悪い」といった不満はすぐに広がり、次からの実習希望者の減少に直結する。
鉾田市で実習生を受け入れている農家を取材すると、宿舎にネット環境を完備するのは当たり前。宿舎を新築したり、家電製品を買いそろえたりと、実習生の待遇に気を配るようになったと言う。休みの日には食事や遊びに連れていったり、期間を終えて帰国した実習生を訪ねて中国などに遊びに行ったことがある農家もいた。実習生との付き合い方も変化しているようだ。