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ジビエやほうき作りのイベントで広がる交流

「熊の肉が食べられるというのを聞いて参加しました。なかなか食べられないですからね」と話すのは製造業の高田遼さん(34)。市内の中心部に住んでいる。なぜ、限界集落の里山のイベントを知っていたのか。

「妻が何度か参加していたんです。来るのは3回目です。ここで開かれた(別のイベントでの)バーベキューに来たこともあります。仕事はプラスチックを扱っていますが、仕事と違って、自給自足の感じがいいですね」

熊と猪の肉を鉄板で。食欲をそそる

 きょうだいで参加したのは、保育士の山本美穂さん(44)と、パートの上田淳子さん(40)の2人。市内の出身だ。親類が「小菅沼・ヤギの杜」で働いているため、イベントを知ってはいたが、参加したのは今年が初めてだという。コキアを植えるところから収穫祭まできたことになる。笑顔で楽しそうに、ほうき作りをしていた。美穂さんは「友達にも教えたんです。参加したいと言っていました」と口コミで広げている。淳子さんは「10月のイベントは台風で中止になったんですが、1年通じての思い出になりました」と話していた。

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枝にコキアを固定する

 3人のグループは看護師の女性たちで、富山市から訪れていた。グループの中心になったのはゆかりさん(24)。市内の出身だ。祖母とこの地を訪れたときにイベントの案内があったために、参加するようになったという。

「山は好きなんです。魚津にこんなイベントがあるなんて知りませんでした。なかなか体験できないイベントが多く、楽しいです」

 自作のほうきにまたがり、宙を浮いて魔女のような「インスタ映え」する写真を撮影している様子が印象的だった。

自作のほうきで「インスタ映え」

 こうして、住んでいる人がいなくなった地域にもかかわらず、里山で市内外の人との交流が成立している。

若者の後継者と町のガイドが必要

 小菅沼は、魚津市の松倉地区にある。戦国時代には松倉城があり、砺波市の増山城、高岡市の守山城と並んで、越中国(富山県)の三大山城の一つだ。その松倉城の支城に小菅沼城がある。山城ファンは訪れたい場所だろう。5月には「うおづ戦国のろし祭り」が開催され、城主や姫が迎え出てくれるという。この風景にのろしがあがるのは見てみたい。

 その城址付近に、冒頭で紹介した「小菅沼・ヤギの杜」がある。しかし、こうしたイベントが、ただちに移住や定住に結びつくわけでもない。

 同地区の人口も少なくなり、松倉小学校は他の地区の小学校と合併した。

ヤギは子どもたちにも大人気だった

「人口減少は地域の悩みです」と語るのは、黒崎充・松倉公民館長だ。「全国どこの過疎地域や限界集落も後継者不足と悩みは同じ。若者のグループを作っていかなければならない」と話すが、「地域のことを知らない人が多い。名木もあるが、由来などが知られてない」と残念がる。「地域資源をデータに残さないといけない」と、町のガイド役の必要性を話していた。

 もちろん、松倉地区だけが人口減少しているわけではない。市全体でも同じだ。