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愛知、ウィーンに続いて「またプロパガンダ」の声 離島アートイベント炎上で街宣車、警察官が上陸

尾道市百島の「ひろしまトリエンナーレ」プレイベントで一体何が起こったのか?

2019/11/24

ネット右翼界隈で「またプロパガンダをやっている」

 今年開催の「百代の過客」も、そうしたイベントのひとつである。これは、10月5日から12月15日までの土日祝日に開かれる企画展と、10月6日、11月16・17日に開かれる連続対話企画のふたつからなっている。

 例年どおりであれば、ここまで炎上することはなかっただろう。ところが、今回は企画展に、「昭和天皇の写真を燃やす作品」と批判されたばかりの、大浦信行の映像作品「遠近を抱えてPartII」と、そのもととなった版画「遠近を抱えて」が含まれていた。

「百代の過客」のパンフレット。裏面には「ひろしまトリエンナーレ2020 プレイベント」とある。

 しかも、折り悪く、その企画展のスタートが、あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」の再開時期と偶然ほぼ重なってしまった。来年開催の国際芸術祭「ひろしまトリエンナーレ」のプレイベントと位置づけられていたことも、現代美術に明るくない人々に「またトリエンナーレか」との印象を与えただろう。

 このような要素が重なり、百島は、ネット右翼界隈で「またプロパガンダをやっている」「天皇ヘイトだ」と問題視されるにいたったのである。

 すでに10月末には、ウィーンで開かれた展覧会「ジャパン・アンリミテッド」について、在オーストリア日本大使館が両国友好事業の認定を取り消す騒ぎがあった。これもネット右翼の活動が発端のひとつになったともいわれている。

「ジャパン・アンリミテッド」で展示された会田誠氏の映像作品 ©共同通信社

 また前後して、川崎市の映画祭では、慰安婦問題に関係する作品の上映が一時中止され、伊勢市の展覧会では、やはり慰安婦問題に関係する作品の展示が不許可とされた。

「百代の過客」も、状況次第で以上のような動きに巻き込まれる恐れがあった。

おそらく前代未聞の厳戒態勢

 では、当の百島では、一体どのような事態になっているのだろうか。筆者は、11月16日、一足早く同島に上陸した。

 ART BASEのスタッフに事情を聞くと、やはり電凸があちこちにきているという。右翼がトークイベントにあわせて大挙上陸し、抗議活動を展開するという剣呑な情報も囁かれていた。

 百島には、常駐の警察官がいない。そのため、暴力沙汰になったら大変だ。離島だけに逃げ場所がなく、対立する人物同士が狭い船内に乗り合わせることもありうる。

 そこで、さまざまな安全策が取られた。スタッフは、無線機で常時情報を共有。トーク会場には、屈強な警備員も複数配置された。翌17日には、さらに警備員が増強され、警察官も派遣され、トーク会場には金属探知機が設置されることになった。

 百島でここまでの厳戒態勢は前代未聞だったのではないか。ネットの炎上は、思った以上に現実に大きな影響を与えていた。