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百島に街宣車がやってきた

 こうして、ついに緊迫の17日がやってきた。この日はやはり、朝から大きな動きが見られた。

 まず、尾道市駅前では、政治団体が、大浦作品の展示に反対する街宣活動を行った。メンバーは10人ほどだが、私服警官らしき男性たちが周りで厳しい視線を送っており、物々しい雰囲気を醸し出していた。

 そのいっぽうで、百島では別の激震が走った。なんと、街宣車がフェリーに乗ってやってきたのである。

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 小さなフェリーなので、搭載の車が遠目からも確認できる。見慣れない、黒い車があるぞ――。あっ、街宣車だ。それがだんだんと島に近づいてくる。スタッフの無線も急を告げたにちがいない。

 街宣車は上陸するや、旧中学校の校舎に向かった。すわ、一大事。軍歌を流すのか、大音響で演説するのか。

 ところが、中から出てきたのは、親子連れだった。小さなこどもも、特攻服のようなものを身に着けている。その可愛らしい姿は、警戒するスタッフの心をほっこりさせた。

 結局、街宣車は騒ぐこともなく、日が暮れる前に、またフェリーに乗って帰っていった。とんだ前菜のお出ましだった。

尾道駅前の様子。向かって右側が尾道港。

トークイベント「表現の不自由を越えて」は満席

 午後になり、いよいよメインディッシュであるトークの時間が迫ってきた。

 尾道港では、13時15分、街宣活動を行っていた政治団体のメンバーが、高速船に乗り込んで百島に向かった。目撃者によれば、見送りの人々がいて、盛んにエールを送っていたという。

 メンバーは島に着くや、トークイベントの会場である旧支所にまっすぐ向かった。せっかく問題の作品が別の会場にも展示されているのに、そちらには関心がないようだった。 

 この日のトーク「表現の不自由を越えて」は、大浦と、美術史学者で大阪大教授の北原恵、そして美術家で映画監督の小泉明郎によって行われた。

 もちろん会場は満席。四隅には、明らかにそれとわかる警備員が立ち、「PRESS」の札を下げたメディア関係者の姿も目立った。やはり前日より空気はピリピリしていた。