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「“出口”が見つからないがために、形にならない善意がある」『24時間テレビ』生みの親が語る、番組の原点

『24時間テレビ』生みの親・都築忠彦氏インタビュー #3

2019/11/24

人々は善でも、悪でもない

――福祉やチャリティーに関心を持たれたのは、テレビ局に入られてからですか?

都築 そうかもしれないですね。さっきも言ったけど、『11PM』では徴用工問題や慰安婦問題もやったし、沖縄返還もやったし……今だったらとてもテレビじゃできない話だよね。いろいろな問題のうちの一つとして、福祉にも興味を持ったということですよね。

――幼少期から学生時代までのお話を伺うと、都築さんの問題意識というのは、ずっと一貫しているのではないかと思いました。一部の人が強い問題意識を持って行動するよりも、広く大衆に訴えていくほうがいいのではないか、と。もっと言えば、訴えればきっと応えてくれるだろうという、大衆への信頼みたいなものがあるのではないか、と。

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都築 飯尾潤さんっていう政治学者の方が、最近、「出口の見つからない善意」っていうのをおっしゃっているんですね。漠然と「いいことをしたい」って思っているんだけど、分かりやすい“出口”がないから、具体的に何をしたらいいか分からない。そういう気持ちを持っている人が、人口の半分くらいいるというような話なんですよ。

 

 だから、人々っていうのは必ずしも善ではないんだけれども、出口がないことによって形にならない善意というのも、実はたくさんあるんだと思うんです。

「出口のない善意」に「出口」を示したかった

――『24時間テレビ』は、そういった「出口の見つからない善意」に、分かりやすい「出口」を与えた番組なのかもしれません。

都築 まさにそうだと思います。「社会を良くしたい」という気持ちをなんとなく持っている人たちに、こんな問題があるんだよ、あなたも直接参加できるんだよ、ということを示したかった。

 

――視聴率が取れるような娯楽性は確保しながら、一見硬いテーマも入れ込んでいく番組作りの方法も、『11PM』の頃から一貫しているのではないかと思いました。『11PM』では大橋巨泉さんがエンタメ企画も、社会派企画もシームレスに繋いでいたと話していましたが、『24時間テレビ』の場合は、それらをつなぐものはなんだったのでしょう。

都築 それこそ、「出口の見つからない善意」の、圧倒的な支持が支えになったと思います。