武蔵の学びは「ワクワク、ワイワイ」
武蔵の卒業生たちに取材を重ねていると、とにかく授業のアカデミックさを熱く語る人が多いのに驚かされる。毎週毎週ナウル(南太平洋の島国)の話ばかりの地理の授業、1年間使って延々と「江戸時代の相撲」を熱弁する日本史の授業、膨大な時間をかけて『古事記』の原文を読み解く国語の授業……。
武蔵の授業の話を聞いていると、大学の講義のようである。そう感想をもらすと、一人の卒業生はうなずいた。
「そう。大学の講義みたいです。それも、パンキョー(一般教養科目)ではなく、専門のレベルです」
実際、武蔵の教員は専門分野における「研究者」である場合が多い。聞けば、武蔵の教員は研究日が与えられていて、授業は週4回以内で収まる教員が多い。
校長の杉山剛士先生は、武蔵の教員たちの質の高さが誇りだという。
「わたしがいつも感心させられるのは、先生方はみんな普段から研究テーマを持って勉強していて、学問的な好奇心旺盛な方ばかり。そういう先生方が分割授業なども取り入れた少人数制の指導をおこなっているので、生徒たちは好奇心を刺激されていく……そんな学びの仕掛けが武蔵にはずっと受け継がれているのです。武蔵の学びは『ワクワク、ワイワイ』……そんな雰囲気の中で生徒たちは創造性、個性を培っていくのでしょう」
武蔵生は「自調自考」の姿勢を身にまとう
校長の杉山先生はこんなエピソードも教えてくれた。
「たとえば、今年の記念祭(文化祭のこと)の講演会に卒業生でミュージシャンの亀田誠二さんが登壇しました。その彼が講演会で『武蔵で学んだことは“自ら調べ自ら考える”』って口にしたのです。そして、同じく卒業生の早稲田大学総長の田中愛治さんを講演会に招いたときも、やはり『武蔵では自ら調べ自ら考える姿勢を身に付けた』っておっしゃっていたのです」
武蔵の教育について調べていると、「自調自考」ということばがキーワードで度々登場する。
武蔵を運営する「学校法人根津育英会武蔵学園」のウェブサイトの「学園長ご挨拶」に次のような文言がある。その一部を抜粋しよう。
「武蔵学園は問題を自ら調べ自ら考え、そして自ら解決する力を身につける教育を重視しています」(学校法人根津育英会武蔵学園 学園長・有馬朗人氏)
こんな話を聞くと、「でも、大学受験が不安で……そんな悠長なことを言っていてよいのですか?」と不安に駆られる保護者がいるだろう。