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 副校長の高野橋先生は子どもたちの成長を「待つ」ことが大切だと強調する。

「男の子は中学入学当初はなかなか目に見える成長はないけれど、あるときにギュッと伸びることがよくあるのです。だから、男の子を成長させるにはひたすら『待つ』ことしかないと思いますよ。すると、あるとき男の子はスイッチが入る瞬間があって、そこから人が変わる……そういう男の子の成長観、教育観というのは、再確認すべきでしょう」

武蔵生の進路が多岐に渡る理由

 先述したが、難関大学合格実績で台頭するライバル校と比較されて「武蔵は御三家から凋落した」という辛辣な文句でメディアに報じられた「苦難」の時期もあった。

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 しかし、武蔵の「合格実績」は誇れるものだと高野橋先生は胸を張る。

「わたしが進路担当として外に対して広報活動していたときに、進路先をはたと見直してみたのです。すると、東大ではないけれど、旧帝大、国立医学部、早慶……大半の生徒はこの範囲の大学に進学しているのです。東大に拘らないバラツキはどうして生まれたのだろうと考えて分かったのは、高校時代に『自分はこれをやりたい』と決まる生徒が多いことです。たとえば、建築やりたいと思ったら東大を選ばない。なぜなら、進学の振り分けが途中でありますから建築に行けるとは限らない……それなら早稲田の建築に行こうとかね」

©iStock.com

 校長の杉山先生もこう言い切る。

「進学実績、生徒たちの進路希望を叶えなければ武蔵ではない。そう思っています。そのために大切なのは現場の一人一人の先生がどういう教育デザインを描いていくのかが大切です。もちろん、進路希望の実現、イコール、東大とは考えていません」

 最後に、冒頭の「たとえ話」を再掲しよう。

〈武蔵生……組立の途中で各パーツにのめりこんでしまい、なかなか作品が完成しない〉

「自調自考」の姿勢が芽生えるまで、武蔵の教員は生徒たちを温かく見守り、「学問」の奥深さを伝え続けていく。すると、彼らは何かをきっかけに将来の具体的な展望を思い描くようになる。

 武蔵とはこのような魅力あふれる独自性のある男子校なのだ。

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