なぜオリーブオイルは“逆効果”なのか?
この興奮状態が慢性的に続いてしまうと、脳過敏症候群というさらに厄介な症状を起こす可能性もある。
「興奮状態が脳にこびりつき、痛みがなくなっても、耳鳴り(頭鳴)や浮動性のめまいなどの諸症状を引き起こすようになった状態を脳過敏症候群と呼びます。『頭の中でセミが1000匹鳴いている』『頭の中で誰かが太鼓を叩いている』と例えるほど激しい音が聞こえる耳鳴りやしつこいめまい、抑うつ、不眠、不安障害などの辛い症状が起こる病気です。長期間、片頭痛の適切な治療を受けずに我慢してきた40代以上の人に多く見られます。こうなる前に適切な治療を受けることはもちろん重要ですが、普段の生活でも脳を刺激しないような工夫をしていくことが大切です」
脳を刺激しないための工夫として、陽光や、PCやスマホの画面が発するブルーライトに眼を過剰にさらさないこと、映画館やゲームセンター、人混みなどの騒音のある場所は避けること、香りの強い香水や柔軟剤は使わないことなどがあるが、特に注意したいのが食事だという。
「一般的に『健康にいい』と言われる食品が、実は片頭痛には逆効果であることもあります。そのひとつがオリーブオイル。オリーブオイルにはポリフェノールが含まれていて、血管を拡げ、血行を促進する作用があるため健康にいい食材とされています。しかし、血管を拡げることは、前述した通り、脳血管を拡張させ、周囲の三叉神経を刺激して症状を悪化させることになりかねません。その他にも赤ワインやチョコレート、チーズ、柑橘系のフルーツは血管を拡張させるチラミンという物質が多量に含まれていますし、ハムやサラミ、ソーセージなどに使われている亜鉛酸ナトリウムにも血管拡張作用があります。そのため、イタリアンでの食事には要注意です。オリーブオイルをたっぷり使った魚介類のマリネに、赤ワインを飲みながらチーズをたっぷり使ったパスタ、オリーブオイルをふんだんに使ってこんがり焼いた仔牛のロースト、デザートは地中海のオレンジを使ったシャーベット……。とても美味しそうなメニューですが、片頭痛持ちの人や脳過敏症候群の人が食べれば、ほぼ間違いなく痛みや諸症状を悪化させるでしょう」