先週末、札幌はフィギュアスケートファン……とりわけ羽生結弦選手ファンによる熱気に包まれていました。フィギュアスケートグランプリシリーズ第6戦NHK杯への羽生選手の出場、そして優勝は日本のファンにから熱く待ち望まれたことだったのです。
「真4回転時代」と称され、高難度・多回転のジャンプを数多く演技に取り入れる必要性のある昨今、選手の身体への負担も大きく、羽生選手はたびたび負傷に見舞われてきました。その結果、シーズン中盤に行なわれるNHK杯・全日本選手権といった、本来であれば日本のファンが一番観戦しやすい大会を欠場せざるを得なくなることがつづきました。
「日本での試合」はほとんどなかった羽生選手
全日本選手権は2016年から3大会連続で出場できていません。2連覇を果たした平昌五輪以降、日本国内で行なわれた羽生選手の公式戦は2019年3月の世界選手権ただ1試合のみ。平昌五輪を含む2017-2018シーズンも負傷により国内の試合を2試合とも欠場しています。3シーズン、ほとんど日本での「試合」はなかったのです。むしろ、カナダやロシアでの試合のほうが多かったほど。
アイスショーなどで演技を披露する機会はあったものの、「日本での試合」というのは極めて希少な機会であり、ファンはわずかなチケットを争奪することになりました。試合そのもののチケットだけでなく「公式練習」にも応募が殺到し、多くのファンが落選の憂き目にあうほどに。
幸運にもチケットを得て札幌へ
今回、僕は幸運にもフリープログラムの日のチケットを得ることができ、札幌へと向かいました。羽田空港への道中、全日空の機内(※ANAは羽生選手が所属する企業です)、そして現地・札幌、いたるところで同志の姿を目撃しました。羽生選手がプロデュースしたアイスショーのイベントTシャツを着用したファン、旅行鞄に「くまのプーさん」のぬいぐるみを提げたファン、「4Lo」(※4回転ループの意)など羽生選手の演技構成をプリントしたお手製のグッズを手にしたファン。そこかしこに同志はいました。
そして、試合会場にも。チケットを入手したファンは当然のこと、チケットがないまま「ダメ元で」会場に駆けつけたファンが最寄り駅そして会場前に列をなしていました。「同行させてください」という祈りを込めたボードを掲げて。どうしても、どうしても見たいのです、という切実なアピールでした。北海道からだけではなく、全国からファンが集っているからこそ、最後の最後まで諦めきれない想いが「ダメ元で」会場へと向かわせるのでしょう。