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 中国人経営の店舗の中も、棚の並べ方からレジの仕組みまで本国そのもの。日本のリアル中華街よりも、より本場感がある。おまけにキャッシュレスのアリペイやウィーチャットペイが利用可能だ。これは決済システムではなく、送金扱いでやっていること。つまり、中国に銀行口座を持っていて、アプリを利用するための中国の電話番号があって紐付けできている人が対象になっている。だからカンボジア人は現地に住んでいながら、まったくキャッシュレスの恩恵は受けていない。

カンボジア人の屋台はエアコンとは無縁だ

カンボジア人が貧しくなったわけではないのだが……

 中国人の経営する商店やレストランは、中国製のエアコンがかかった中国の田舎にありがちな建物で、カンボジア人向けの商店はリアカーだったり、よくてエアコンのない暗い店舗となっている。中国人が入ったことでカンボジア人が貧しくなったわけではないのだが、それにしてもあまりにも店構えが違う。

 カンボジアにはあまりオリジナルの飲料がないので、中国から輸入したジュースを米ドルで購入してボトルを片手に街を歩く。すると周囲のカンボジア人は何か怯えているかのように私を見るのに気づいた。どうも私を中国人と思っているらしい。中国商店でしか買えない中国のペットボトルを持っている私は、カンボジア人にとってはトゲバットを持っているチンピラのように見えるのだ。

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中国のジュースを買うとカンボジア人からひるまれる

お互い近寄ろうとはしない

「いや、私は日本人の旅行者なんです、中国語が話せるので」と説明した上でカンボジア人に英語で話を聞いてみると、シアヌークビルでの逮捕ニュースを日々見ているため、中国人は乱暴で犯罪に手を染め、関わってはいけない人たちだと思っているのだという。

 逆に中国人はカンボジア人を面倒臭がっている。中国人に話を聞くと、特に路線バスがないシアヌークビルで唯一の交通手段であるトゥクトゥク(三輪タクシー)での運賃交渉で、足元をみられ本来の額の何倍もの額を提示されることをはじめとして、ぼったくられると不満を語る。英語やカンボジアのクメール語を話そうとする中国人は極めて少なく、言葉がわからない同士でやり取りしており、お互い近寄ろうとせずお互いのコミュニティ内で生活している。

シアヌークビルのカンボジア人の子どもたち

 中国城は、シアヌークビルの中でもとびきり中国人同士のトラブルが頻発する地域としてカンボジア人に恐れられている。それもそのはず、中国城は中国のマッチョな兄貴たちが全力で街づくりをしているところなので、ちょっとしたトラブルから肉体と肉体をぶつけ合い、まれに拳銃まで出てくるケースもあるのだという。