現地人を活用するサービスは苦手
ともなれば、なんでも本国で培ったネット技術をカンボジアやその他の国々に適応できそうだが、そうでもない。
市内の唯一の乗り物であるトゥクトゥクは、中国人在住者が「カンボジア人ドライバーが相場の何倍もの金額を提示してくる」というほど悩ましい存在だ。この問題の解決方法としてUberのような配車サービスを謳うカンボジア産の「PassApp」というアプリも出ているが、このアプリは実際のところ乗車地点から降車地点までの相場を知ることと、バイクを呼ぶこと、相場を見せて不利にならない価格交渉をすること、この3点しか活用できない。Uberや東南アジアに強い「Grab」、中国の「Didi」に比べると、あまりにサービス内容が貧弱だ。
海外の中国人は、フードデリバリーで同胞の中国人を活用したり、シェアバッテリーなどのように製品を活用したりするのはできるのだが、配車サービスなどの現地人を活用するサービスは苦手らしい。
中国人が多く移住するカンボジアのシアヌークビル。移住した結果、街ばかりかネットサービスまでもが中国そっくりになった。一方で、現地に溶け込まない、溶け込めないために、現地人を活用したサービスができないといった壁も見えた。筆者が中国のネットを使えるから見えてきたことだ。アプリを起動することは非中国在住者にとってハードルが高い。なにせ中国人はGoogleなどを締め出して独自のインターネット文化を進化させているので、アプリストアを探してもまるで見つからないのである。
中国人は中国人同士で、生活水準を改善していく
となるとアジアであれアフリカであれ、中国人が多数移住した街で中国未経験の日本人ジャーナリストが取材しても、街の様子という一側面でしか見ることができない。ジャーナリストだけではない。他国のビジネスマンがカンボジアで孤軍奮闘する中、中国人は中国人同士でネットサービスを活用し、生活水準を改善していっている。中国語が使えることで生活やビジネスが改善されることだろう。
今後、一帯一路の掛け声で中国の影響力はより強大化するだろう。現地での調査やビジネスに必要な能力は、中国語だけでは足りず、中国のライフスタイル・ネット活用も熟知する必要がある。シアヌークビルに行ってそう感じた。
写真=山谷剛史