文春オンライン

寒い冬だから……東京の“知らない街”で食べた300円「あつもりそば」が超絶品だった話

2019/12/10
note

毎日変わる「返し」と「おつゆ」の熟成度

 ●現在の返し(◎したところが現在の状態)
 早熟(醤油強め)・・・・熟成(丁度良い)・◎・・・完熟(甘み強め)
 ●現在のおつゆ(◎したところが現在の状態)
 早熟(香り強め)・・・熟成(丁度良い)◎・・・・完熟(旨み強め)

面白いメニューその2「現在の返し、現在のおつゆ」。マークのシールが現在の状態だそうです

「現在の返し」という記載が興味深かったので、食べながら山田店主に聞いてみた。

 すると、ユニークな回答が返ってきた。つゆや返しは先代の時と同じ作り方をしているという。返しは生返しで、10日間くらいで注ぎ足していくそうだ。注ぎ足した直後は醤油の香りが立った状態で、それがだんだんなじんで熟成していくという。お客さんが食べに来ると味が変化していくので、それを分かりやすいように現在の熟成度をチェックして記載しているというわけである。

ADVERTISEMENT

 返しが「早熟」なら、つゆは香りが強くなる。「完熟」ならつゆは旨みが強くなる。

「雪国」という店名の由来

「その日のつゆの状態を知ってもらい注文をいただければありがたい」という。

「このつゆは新潟出身の叔父が三ノ輪橋駅前で立ち食いそば屋『雪国』をやっていた時に、先代が叔父から教えてもらった秘伝のものなんです。これだけは変えていないんですよ」と山田店主は教えてくれた。

 なるほど、『ありがたいつゆだ。先代につゆを伝授した方は新潟出身だから「雪国」と名乗ったのか。それを先代がのれん分けで使ったのか』とぼんやりと納得しながら食べているとあっという間に完食してしまった。

 そこで、再再度、面白い記述はないかとメニューを眺めてみた。