さらに、そうした悪意ある書き込みを記事にするメディアの存在も問題です。芸能人のSNSにそんなコメントがつけば、その書き込みをことさら取り上げて記事にし、酷い時はタイトルにまでして世の中の論争を煽ります。そして、そんな報道にもさらに悪意のある書き込みが繰り返される。女性芸能人は、書き込みでもなんでもセクシャルな部分で攻撃されてしまう。男性芸能人には、『お前を強姦してやる』なんていう書き込みはないでしょう。
なぜ自殺というのでしょうか、これは社会的他殺です」
幼い頃から一挙手一投足、事務所に管理される
ただ、問題は書き込みだけではなく複合的だとイ教授は言う。
「ネットへの悪意のある書き込み、報道姿勢、そして、芸能界、K-POPの構造自体にも問題があります。
幼い頃から練習生として、他のコミュニティや家族から隔離されて、平凡な日常から遮断されてしまう。長い人生を見れば、芸能人としてではなく、一人の人間として生きる時間のほうが長い。ですから、人間としての力量を育てなければなりませんが、K-POP業界ではそれができない仕組みになっている。そして、その中で成功するのは一握りで、その一握りからは、多くの練習生に投じた資金を回収しなければなりませんから、無理を強いて途方もなく仕事をさせてしまう。
そして、一挙手一投足、所属事務所に管理される。こうした構造自体が反人間的な状況だと思います。
そのうえ、芸能記者、ファン、読者、そんなすべての人たちの視線から逃れられず、身動きができなくなってしまっている」
イ教授が先週、あるイベントを行った際、集った参加者はク・ハラの話がでると涙をこぼしたという。
「女性はク・ハラさん、ソルリさんを自分と同一視します。だから、自分をも責めてしまう。
男性がもっと自省するべきです。自省しないかぎり、社会が変わらないかぎり、このようなことは続いていきます」
冒頭のような悲痛な声はいつになればなくなるのだろうかーー。
(文中敬称略)