神田神保町は、多くの書店(世界一ともいう)が集まるディープな本の街だ。その多くは古書店で、極めて専門性の高いジャンルに特化した古書店が靖国通り、すずらん通りの南側を中心に軒を連ねている(*)。新刊書店の数はさほど多くないが、三省堂書店、書泉、東京堂書店をはじめとした総合書店と、岩波ブックセンター、ブックハウス神保町、農業書センターなどの個性的な専門書店が、ごく狭いエリアに集中している。
(*)豆知識ですが、本が陽に焼けるのを嫌う古書店は、通常、正面が北向きになるように道路の南側に立地しています。
今回、そんな神保町の本屋さんの中でも、神保町らしい「ザ・本屋」とでもいうべき店、東京堂書店神田神保町店に取材にうかがった。個人的には、神保町に行くとつい寄ってしまう、寄るとつい何冊か手に取ってしまう、お財布的に危険な本屋さんだ。
スタッフの小山貴之さんによると、数年前、カフェ併設店舗にリニューアルし、客層もだいぶ若返りしたというが、それでもその独特な品揃えと発信力は健在だ。すずらん通りに面したウインドウには、販売ランキングの上位の書籍が陳列されているが、ネット書店や取次が発表する全国ランキングと比べてみると面白い。また、同じ本の街にあっても、例えば三省堂書店神保町本店と比べても、個性は明らかだ。
売場の中でも一等地、その形から東京堂利用者の間でリニューアルの前から「軍艦」と呼ばれている棚(正式には「知の泉」と名付けられています)に陳列されている本もすごい。例えば、芥川賞・直木賞作品や本屋大賞にノミネートされるような売れ筋文芸書ももちろん置いてはいるのだが、入荷した新刊をただ並べるのではなく、担当のスタッフがこの「軍艦」に並べるために数を指定して仕入れている、東京堂書店のオススメ本だ。この棚のすごさは、もう、見ていただいた方がいいのだが、写真だとタイトルまでは読み取りにくいかと思うので、2月取材時の陳列から、いくつか気になる本を記録しておこう。
『少年の名はジルベール』『けだものと超けだもの』『誤植文学アンソロジー』『帳簿が語る歴史の真実』『妖怪・憑依・擬人化の文化史』……「妖怪・憑依・擬人化」、気になりません? きっと見る人によって、別の気になる本が出てくるのかと。