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人工知能「東ロボくん」を立ち上げた、ある学者のつぶやき

 一方で、科研費を実際に誰にどう支払い研究を補助するかを適切に判定する立場にある人物が、結構な問題を抱えていたりもします。新井紀子さんっていう学者の人なんかは、Twitter上で余計な主張をした結果さんざんに論難され、開き直った挙句に、そういう発言者はリスト化していて科研費を払わないと豪語する事例まで勃発しました。

 この人、東京大学の試験を日本語で受けさせる人工知能「東ロボくん」を立ち上げた割に、その研究が一定の成果を挙げたらさらなる上積みを狙えばいいのに何故かそこからイデオロギー闘争にシフトして「日本人は教科書が読めない」ので「新井紀子さんらが作ったリーディングテストを学生にやるべき」とか言い始めました。いや、そうじゃねえだろ。 

新井紀子さんのツイートより

カネが少ないうえにムダがたくさんある

 つまりは、日本の科学研究予算というのは原資が限られていて、各省庁が扱う「科学技術関係予算」は合計で3兆8,396億円(平成30年度)で、これは国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センターなど医療系の機関も全部含んでの数字です。そこから各省庁が我が国にとって重要な技術分野をピックアップしていって、細かく細分化されていった結果が、山中さんのiPS細胞の貯蓄事業の年間10億円なわけですよ。ノーベル賞受賞者の、山中さんの事業が、ですよ。それも、再生医療は日本の研究開発では重要だと優先配分されている、といわれていながら、です。

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 それじゃあ一般の、有名ではないけど優秀な研究者によるプロジェクトはどうなるんだという話であります。少ない予算に多くの研究者が申請して確保しなければいけません。科研費の申請が通らないと、大学や民間からの共同研究予算でも取れない限り研究費がなくなってしまいます。しかも、研究は当然できる前提で科研費が払われる仕組みなので、研究に必要な設備やスタッフの人件費などは原則として充当されません。さらに、ちょっとでも申請した研究内容と異なる使い方をすると「全額返せ」と言われかねず、また、おカネを使い切れないと年度末に無理に費消することを強いられたりします。

©iStock.com

 カネが少ないうえに無駄がたくさんあるので、我が国のアカデミックな研究開発は能力のある人たちにとっては魅力的な場所ではなく、海外に出ていける人は出ていくし、民間から資金が引ける人は国内の大学や研究機関を頼らなくなってしまいます。