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ロンドン短期滞在中に有り金を盗まれて無一文に……「軽犯罪は捜査しません」宣言の実情とは

2019/12/15
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ロンドン警察に英語で電話

 有り金は全部なくなったが、ホームステイ先の鍵と、1カ月分の定期券はポケットに入れていた。これを盗られていたら、本当に取り返しがつかなかった……。不思議なくらい軽い気持ちで(背中に何も背負ってないので当然)自宅に帰り、ホストファミリーに事情を説明したうえで、盗まれたカード会社の緊急デスクに電話をかけまくり、クレジットカード・キャッシュカードを停止する。

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 よく考えたらキャッシュカード、1ミリも持ってくる必要がなかったのに、どうして入れていたんだろう……ともはや遅すぎるツッコミを自分に入れつつ、次は警察に電話。人生初めての英語テレフォンチャレンジだ。ちょうど前日の授業で“I had my passport stolen.(私はパスポートを盗まれました)”という例文を練習していたので、“Today, I had my baggage and all money stolen!”とスラスラ言うことができたし、この言葉を、その後人に会うたびに発する羽目になった。通報は無事終了し、電話口でクライムナンバーというものを告げられ、確認のメールが送られてきて、警察とのやりとりは終了した。

黒い帽子を目深にかぶった男

 やるべきことはやった。あとは捜査の進展と、親からの国際送金、カード会社に依頼した緊急カード手配を待つのみ……と胸をなでおろしたが、さらなる衝撃があった。その後警察から、特に何も連絡がないのである。すごい頑張って電話したし、時間と場所が明らかなのに?!

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 やむをえず語学学校の先生に相談し、自分たちでパブを再訪。店の男性マネージャーは渋い顔をしていたが、先生がずけずけと「CCD(防犯カメラ)を見せて! この店の管理の問題よ!」と激しく言い続けてくれたおかげで、マネージャーは「自分がカメラ映像をチェックしておくから、明日店が空いている時間にまた来てくれ」と請け負ってくれた。

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 そうして該当時間の映像はチェックしてもらえたが、1人怪しい人物がいたものの、「黒い帽子を目深にかぶった男」で、顔を全く確認できなかったという。それとは別に、男子トイレから、衣服だけが入ったノースフェイスのバックパックが発見されたとも聞いた。これは私のリュックサックとは違うものなのだが、この黒い帽子をかぶった男が別のところでノースフェイスを置き引きし、トイレに置き去りにして、帰りしなに私のリュックを持っていった可能性が高そうだ。相当の手練である……。