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『アナ雪2』を前作と比べて観た“5つの戸惑い” なぜミニマムでパーソナルな物語は失われたのか

2019/12/19

genre : エンタメ, 映画

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「♪ありのままで~♪」のように口ずさめない新曲

 そして『アナ雪』といえば音楽である。なんといっても『1』はメイン曲「Let It Go~ありのままで~」に尽きる。あのキャッチーなサビメロ、いかなるコンプレックスを抱える者だろうと全肯定してくれる「♪ありのままで~♪」というフレーズ。しかもオリジナルの英語版ですら「♪レリゴー(Let It Go)♪」と4文字にして口ずさめる。誰でもバイリンガル状態で歌えて「俺は俺でいいんだ!」「私は私でいいんだ!」「俺は私でいいんだ!」「私は俺でいいんだ!」と心の底から思えるこんな曲って、今までになかったんじゃなかろうか?

東京ディズニーランドで行われた冬のスペシャルイベント「アナとエルサのフローズンファンタジー」。プロジェクションマッピングでシンデレラ城に映画『アナと雪の女王』の世界を再現した。 ©時事通信社

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 今度のメイン曲「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」にもその再来を期待したわけだが「Let It Go~ありのままで~」には遠く及ばなかった。サビメロはキャッチーだが「♪未知の旅へ~♪」というフレーズが観ている者のどこにもリンクしそうにない。さらにオリジナル英語版の「♪Into the Unknown♪」は短くして歌うには難しい。かといって音楽が駄目なわけでなく、クリストフが歌う「恋の迷い子(Lost in the Woods)」は個人的にも神曲。REOスピードワゴンやスティクスといった“80年代産業ロック”のバンドが歌いそうな“オヤジホイホイ”全開なロック・バラードで、歌唱シーンもいまの若い人が観たらダサくてイタいとしか感じられない当時のMV風に仕上がっているが、40オーバーの筆者にはこみ上げてきて仕方なかった。

「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」